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【FC東京ルヴァン制覇】1年前の敗因「選手層と勝負弱さ」払拭 アンカー森重真人の“利きぶり”が象徴的なワケ
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/05 17:02
江坂任やオルンガら柏の強烈な個の力を、アンカーとして分断した森重真人。年越しでタイトルを得たFC東京を支える働きだった
言うまでもなく、日本を代表するセンターバックだが、11月~12月にかけてカタールで開催されたアジア・チャンピオンズリーグでアンカーにコンバートされた。この日も引き続きアンカーを務めたのだが、この在籍11年目の最古参が、実に利いていた。
江坂に自由を与えず、ボールを持てば優雅に
柏のキーマン、江坂任を常に視野に捉えて自由を許さず、ボールを持てば、タメを作ったり、ボールを運んだり、散らしたりして優雅にプレーした。
33歳にして新境地を開拓しつつあるベテランに対して、長谷川監督も「ACLでアンカーにコンバートしたんですが、それからチームが攻守において非常に落ち着いたゲーム運びができるようになった」と賛辞を惜しまなかった。
不慣れな中盤でプレーしたからか、ゲーム終盤に森重は足が攣った。東京ベンチはすかさず品田愛斗の投入を準備したが、結局、代えることはなかった。
その理由が明らかになったのは試合後、喜びに沸くFC東京の選手、スタッフの姿をテレビカメラが捉えたときだった。森重と抱き合った長谷川監督が「絶対に代えないつもりだった」と笑うと、森重も「絶対に代わりたくなかった」と微笑んだのだ。そのやり取りに、ふたりの厚い信頼関係が見て取れた。
アダイウトンという最高のスーパーサブ
1-1で迎えた67分に投入され、74分に値千金の勝ち越しゴールを決めたアダイウトンの存在も、19年シーズンからの進化のひとつだ。試合途中にギアを上げるスーパーサブの欠如――。それも、目前でタイトルを逃した要因だったからだ。
アダイウトンの投入に関して指揮官は「どのタイミングで彼ら(アダイウトンと三田啓貴)を入れて、こちらのパワーを引き出していくかは考えていた」と語ったが、前年の反省から、アダイウトンの途中投入はシーズンを通して重要な戦略として確立させてきた。この大一番でも、それを見事に結果に結びつけたのだ。