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「2020年のバロンドールあったら、誰に投票しました?」 日本人唯一の投票権を持つ重鎮記者に聞いてみた
posted2020/12/31 17:02
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Getty Images
2020年、サッカー界の世界ナンバーワン選手は――誰だったんだ?
年末恒例のニュース、バロンドールがないことをしみじみと実感する年末である。
主催するフランスの名門サッカー専門誌『フランス・フットボール』が選定するバロンドールだが、2020年は新型コロナウイルス禍によって2019-20シーズンがイレギュラーなシーズンになったことを受けて、公正な条件で選べないとして同賞の授与を行わないことを7月に決定した。
確かに致し方ない部分はある。フランスのリーグアンとオランダのエールディビジでは打ち切りに。とはいえ、このシーズンに素晴らしいパフォーマンスを見せた選手がいるのも事実である。過去「FIFAバロンドール」として実施されている時期もあったFIFA最優秀選手にはロベルト・レバンドフスキが選ばれているが、もしバロンドールがあれば絶対2冠だったろうに……と切ない気分にもなる。
例年ならバロンドールを選考するのは、世界各国の国内外サッカーの造詣が深い記者や識者である。実は日本にもその投票権を持つ重鎮記者がいる。イビチャ・オシムやフィリップ・トルシエともコンタクトを持ち、NumberWebで「ワインとシエスタとフットボールと」の連載を持つなど健筆をふるう田村修一氏だ。
国内外のサッカーを四半世紀以上取材している田村氏は2007年から、バロンドール投票権を手にしている。なぜこれほどまでに名誉あるバロンドールに“貴重な1票”を投じられるようになったのか。色々と聞いてみた。
そもそもなんで「FF」誌と仲良いの?
――ということで田村さん、よろしくお願いします!
田村:うん、よろしくね。
――現場などでよくお会いする関係ですので、フランクに話せればと……そもそもなんですが、なぜ田村さんってフランス・フットボール誌とコネクションがあるんですか?
田村:僕がもともと『フランス・フットボール(以下FF)』編集部と近い関係だったのはあるよね。きっかけは1993年のドーハ(アメリカW杯アジア最終予選)だった。アジアサッカーにも注目度が上がり始めた頃で、フランスからも『レキップ』と『FF』、『オンズ・モンディアル』の3誌が取材に来ていて、その際にFF誌の記者と仲良くなったんだよ。
その頃から編集部にも顔を出していたこともあってか、翌年くらいに「日本の通信員が北京に行っちゃうから、代わりをやらないか?」と言われて。僕も「ラッキー」と思って引き受けたんですよ(笑)。