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2年連続最下位ヤクルトが“60億の札束乱舞”のナゼ ファミリー気質と“腸活”で下剋上なるか
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/31 11:04
「ミスタースワローズ」である背番号1の山田哲人。ヤクルトはその引き留めになぜ多額の契約金を支払えるのか
選手の引き止めを全て可能にしたヤクルト本社
特に「ミスタースワローズ」である背番号1の系譜を紡ぐ山田の引き止め、そして将来の監督候補でもある青木の契約延長は球団挙げての大命題。さらに、他球団も獲得に興味を示してきた小川、石山という先発と抑えの柱の流出は、何としても避けたいところだった。それらを全て可能にした好条件の陰にあったのは、親会社であるヤクルト本社の全面的なバックアップだと言われる。
11月に発表されたヤクルト本社の2021年3月期の連結純利益は、前期比1%増で最高益となる400億円の見込み。20年4-9月期の連結決算は、純利益が前年同期比5%増の217億円だった。コロナ禍において健康志向が高まり、腸内環境を整えて免疫を高めるといった『腸活ブーム』も支えの一つとなった。
東京を生活圏にしながらも、現場からは陽性者ゼロ
実はこの『腸活』は実際にスワローズのシーズンも支えていた。
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感染拡大とともに球界にも陽性者が出るなかで、球団は「親会社が健康食品会社なのに、選手から感染者を出すわけにはいかない」と大号令。感染予防対策の徹底はもちろんのこと、チームあげて『腸活』を奨励していた。
神宮球場のクラブハウスに入ると、選手たちはまず、ヤクルト史上最高菌数・最高密度の乳製品とうたう「ヤクルト1000」をグビッと飲む。さらに全選手、スタッフとその家族を含め、各家へ宅配される「ヤクルト1000」に関しては、領収書を持参すると全額返金するシステムの“現物支給”も行っていたという。
そのかいあってか? 感染者数が最も多い東京を生活圏にしながらも、現場からは陽性者ゼロ(業務部門に所属する派遣職員1人のみ感染)。ペナントレースでは、5位広島に12ゲーム差をつけられての最下位に沈んだが、それでもコロナ禍に選手・スタッフが無事完走できたのは、健康への意識の高さの表れでもあろう。