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2年連続最下位ヤクルトが“60億の札束乱舞”のナゼ  ファミリー気質と“腸活”で下剋上なるか 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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posted2020/12/31 11:04

2年連続最下位ヤクルトが“60億の札束乱舞”のナゼ  ファミリー気質と“腸活”で下剋上なるか<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

「ミスタースワローズ」である背番号1の山田哲人。ヤクルトはその引き留めになぜ多額の契約金を支払えるのか

貫き続ける「ファミリー球団」の気質

 さて、ヤクルトと言えば昔も今も変わらないのが「ファミリー球団」と言われる気質だ。楽天や日本ハムなど、メジャーリーグを手本にしたドライでシビアな編成方針を目指す球団の一方で、ヤクルトは生え抜き重視で昭和的な温かさを残した独自路線を突き進んできた。

 毎年けが人が多発するなどその選手層の薄さもあり、実はシーズン中に他球団からトレードの誘いが引きも切らないにも関わらず、20年シーズン中のトレード成立はゼロ。近年は石井琢朗コーチ(現巨人)や河田雄祐コーチ(来季広島)、斎藤隆氏ら選手時代にヤクルトに所属したことのない指導者を積極的に招へいしていたが、21年シーズンは投手コーチに伊藤智仁、尾花高夫両氏が復帰するなどほぼOB組で固めた組閣に立ち戻った。

 折しも国内では生活様式の変化から「ファミリー志向」が高まるなか、貫き続ける「ファミリー球団」の気質は、実は新時代のトレンドか? それは冗談にしても、プロ野球の栄枯盛衰は、時代の変化や産業の隆盛を反映してきたことを考えれば、苦境が続く「新聞」や「鉄道」などに対し、ヤクルトの親会社がコロナ禍においてセ・リーグで最も好況な親会社であることは間違いない。

2年連続最下位から「下克上」?

 未曽有のウイルスが襲い各球団が経営に苦しんだ今季に限って、投打の主役が揃ってFA権を取得したという、「偶然」と「強運」。そしてその全員が好条件で残留を決め、チーム内で高まる「結束力」は、なかなかどうして侮れない。

 投手陣の再建など課題は依然として残るものの、災い転じて福となすヤクルトが2年連続最下位から「下克上」を果たすのも、あながち“鬼が笑う”ストーリーとは言い切れないのだ。

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