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「弱くても、心は折れない」NHK杯、坂本花織の笑顔と三原舞依の涙…互いを励みに歩んでいく
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKoki Nagahama - ISU via Getty Images
posted2020/12/06 11:02
NHK杯を圧勝した坂本(左)と休養明けのシーズンながら4位に入った三原
「1カ月半追い込んだのは無駄じゃなかった」
だがNHK杯は、そんな問題と無縁だった。切れとスピードは最後まで落ちることがなかった。
今春、新型コロナウイルスの影響により約1カ月半、氷上に立てなかった。その時間をいかした。地道に陸上トレーニングに取り組み、体力強化に努めた。陸上トレーニングのみならず、全ての面で怠ることなく努力した。
「1カ月半追い込んだのは無駄じゃなかった」
「最後まで迫力ある演技を全力でやり切る体力がついていると思います。その部分が昨年と比べて認められているのかな」
笑顔を見せた。
「ひたすら苦しいシーズンでした」
平昌五輪に出場し6位入賞、2018-2019シーズンの世界選手権で5位と活躍してきた坂本は、昨シーズンは思いがけない1年を過ごした。
グランプリシリーズは2戦ともに4位で、前シーズンに進出したグランプリファイナル出場を逃した。全日本選手権もシニア転向後でワーストの6位。世界選手権(中止)の代表を逃した。
「ひたすら苦しいシーズンでした」
と振り返る辛い年になった理由は何だったのか。思い至ったのは練習の姿勢だった。
昨春、大学生になったのを機に、周囲は坂本の意思を聞きつつ、練習内容をある程度本人に任せるようになった。おそらくは自立を促すためだっただろう。今後のために大切な過程だが、それがマイナスに働いた。
「自分が『しんどい』と感じたら、練習も、これくらいでいいか、と済ませる感じでやるようになってしまいました」
考えに考えて、そして思った。