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「弱くても、心は折れない」NHK杯、坂本花織の笑顔と三原舞依の涙…互いを励みに歩んでいく
posted2020/12/06 11:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Koki Nagahama - ISU via Getty Images
変わることの大切さ、変わらないことの大切さ。
先日行なわれたフィギュアスケートのNHK杯の2人の姿に、それらをあらためて考えた。
1人は坂本花織、もう1人は三原舞依だ。
今大会はグランプリシリーズの1つである国際大会だが、新型コロナウイルスの影響により、例年と異なり変則的な運営となった。そのため、参加者のほとんどが日本の選手で競われることになった。
女子シングルを制したのは坂本だった。
「出せるもんは全部出せたかな」
ショートプログラム、フリースケーティングともに、1つのエラーもないパーフェクトな演技を披露した。圧巻、あるいは出色、どのように称えられてもよい滑りであった。
総合得点は2位の樋口新葉(200.98点)に大差をつける229.51点。コロナ禍での特例上、国際スケート連盟の非公認ではあるが、従来の自己ベストを6点近く上回る高得点で優勝した。これは世界歴代7位に相当する得点でもある。
「出せるもんは全部出せたかな、って思います」
フリーを終えたあとの、スピン、ステップに関する質問への坂本の答えは、象徴的だった。
まさに持てる力をいかんなく発揮した大会だった。
昨シーズンとは彼我の歴然とした差があった。
とりわけフリーの『マトリックス』は、昨シーズンと同じ曲を用いている分、今シーズンの充実が如実に分かる。
映画のアクションを想起させるハードな動きが振り付けに含まれるプログラムは、体力を要する。昨シーズンは「体力が不足していました」と自ら振り返る場面も散見された。