沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
「普通のアーモンドアイでした」夢のジャパンカップ、ルメールの“リスクマネジメント”で歴史的ラストラン
posted2020/11/30 11:55
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
現役最強馬と無敗の三冠馬2頭の対決は、「世紀の一戦」と呼ばれるにふさわしい、素晴らしいレースとなった。
史上初めて3頭の三冠馬による競演となった第40回ジャパンカップ(11月29日、東京芝2400m、3歳以上GI)で、クリストフ・ルメールが乗る1番人気のアーモンドアイ(牝5歳、父ロードカナロア、美浦・国枝栄厩舎)が優勝。ラストランで自身が持つ芝GI最多勝記録を「9」に伸ばし、有終の美を飾った。
内を走らせたルメールに迷いはなかった
序盤から、ルメールの「リスクマネジメント」が冴えわたった。
アーモンドアイは、内の2番枠から速いスタートを切った。出たなりで先行したが、ルメールはあえて促さず、手綱を抑え気味にして他馬を先に行かせる。
4番枠から出たキセキが外から上がって行き、内に切れ込んでアーモンドアイの前に入った。ルメールは、そこから少しでも馬場のいい外に出すのではなく、そのままアーモンドアイに内を走らせた。外に出して前に馬のいない状態になると掛かる恐れがある。ゆえに、馬場が悪くても前に壁を置くことのできるルートを選択したのだ。
壁をつくれず掛かるリスクのほうが馬場の傷んだところを走りつづけて消耗するリスクより大きいと瞬時に判断し、内で折り合いをつけたわけだ。もし負けたらそのコース取りを敗因とされただろうが、ルメールに迷いはなかった。
アーモンドアイは4、5番手の内で、1、2コーナーを回って行く。
ほかの二強はどうか。松山弘平のデアリングタクトは、終始アーモンドアイをマークしつづけた。向正面ではアーモンドアイより1馬身半から2馬身ほど後ろの外目につけていた。
福永祐一のコントレイルは、さらに2、3馬身後ろの外目にいた。デアリングタクトと同じように、馬場の傷みの少ない、内埒から3頭ぶんほど外をリズムよく走っている。