沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
「普通のアーモンドアイでした」夢のジャパンカップ、ルメールの“リスクマネジメント”で歴史的ラストラン
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2020/11/30 11:55
ジャパンカップを制したアーモンドアイ(中央)。コントレイル(左)とデアリングタクトが続き、3強ワンツースリーで幕を下ろした
伸びていくアーモンドアイ、迫る無敗三冠馬たち
ハイペースで大逃げを打ったキセキが先頭のまま3、4コーナーを回り、直線へ。
直線入口で、ルメールはアーモンドアイをグローリーヴェイズの外に持ち出した。グローリーヴェイズは簡単には止まらない実力馬だから、もう少しその後ろにいて脚を溜めることもできたのだが、早めに前方がクリアな状態に持ち込んだ。
他馬の後ろにいると、後続に外を塞がれ動けなくなるリスクを背負うことになる。これ以上脚を溜めずに外に出ても勝てる、とルメールは踏んだのだろう。これも彼なりのリスクマネジメントだった。
ラスト400mを切ったところでルメールが軽く手綱をしごいた。すると、そこからアーモンドアイは鋭く反応した。気持ちよく走っているときはいつもそうなのだが、何度か手前を替えながら飛ぶように伸びて行く。
ラスト200m付近でルメールが左ステッキを入れた。それに応えてアーモンドアイがラスト100m手前で先頭に躍り出た。そこでルメールはもう2発左ステッキを入れ、アーモンドアイをさらに外に誘導する。
後ろからデアリングタクトとコントレイルが迫る。が、その差はなかなか縮まらない。
アーモンドアイがコントレイルの追い上げを1馬身1/4差で封じ、先頭でゴールを駆け抜けた。勝ちタイムは2分23秒0。
ウイニングランで5000人ほどの観客が入ったスタンドに何度も手を振ったルメールは、こう振り返った。
「引退レースで勝つことができて、無事に帰ってきたことが一番嬉しいです。レース前はずっとエンジョイしていました。今回は最後のレースだったので特別でしたが、自信がありました。普通のアーモンドアイでした。返し馬もスタート前も、とてもプロフェッショナルでした」
感極まって声を詰まらせた前走の天皇賞・秋のレース後とは違い、終始笑顔だった。
「前回の天皇賞は(芝GI8勝の)新記録がかかっていたのでプレッシャーがあったけど、今回はサヨナラパーティーでした。さすがアーモンドアイです。絶対、日本で一番強い馬です」
獲得賞金はディープインパクトを抜き
この勝利により、アーモンドアイのJRAでの獲得賞金は15億1956万3000円となり、ディープインパクトを抜いて歴代3位に。ドバイターフを含む獲得賞金は19億1526万3900円で、キタサンブラックを抜いて歴代1位になった。
ルメールが「プロフェッショナル」と評したように、パドックでは後ろの馬が暴れていても平然としていた。最後までほかの二強に並ばせず、突き放した。ラストランで最高の強さを見せてくれた。
ルメールは、これで今年GI8勝目となり、自身が2018年に樹立した最多勝記録に並んだ。