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マラドーナに「テコンドー」と揶揄された韓国サッカー 86年メキシコW杯で生まれた因縁と勲章
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images
posted2020/11/28 11:01
1986年6月2日、メキシコW杯アルゼンチン対韓国。マラドーナに厳しくチャージを仕掛けるホ・ジョンム
加熱する韓国メディア、ベロンにも直撃
「マラドーナと対戦した記憶が懐かしいと思うのですが……」
昨年12月に国内メディアからマラドーナについて問われると、ホ・ジョンムは失笑しながら答えた。
「当時は、私たちの実力が足りなかったのは明らかです。32年ぶりのワールドカップ出場で、国際試合の経験も少なく、相手の情報などすべてにおいて足りないことばかりでした。でも、今回は違います。しっかり準備を整え、簡単に崩れないところをお見せしたいと思います」
それ以降もアルゼンチンに関する報道の熱が冷めることはなかった。昨年12月、UAEのアブダビで行なわれたクラブワールドカップでアジア王者の浦項スティーラーズを取材した際にも、韓国人記者たちの過熱ぶりを目のあたりにした。
試合前日の記者会見で、南米王者のエストゥディアンテスに所属するアルゼンチン代表のベロンに、大会とはまったく関係のない質問をしたのだ。
「ワールドカップで対戦する韓国をどう思うか?」
発言に困ったベロンは大人の対応で、ていねいに答えたが、会見場は妙な空気に包まれていた。なぜ、そんな質問をするのかと韓国人記者に尋ねるとこう返してきた。
「韓国ではアルゼンチンとの対戦の話題で持ち切りですし、ベロンのコメントが取れるチャンスなんてめったにありませんからね。これも韓国メディアがやるべきミッションの1つ。日本のスポーツ紙記者も、同じ立場だったらコメントを取りたいと思うはずですよ」
挑発したマラドーナ、反論するホ・ジョンム
過熱する韓国側の報道は、マラドーナの挑発的なコメントで、最高潮に達した。
「私はホ・ジョンムのことをよく記憶している。86年の韓国の選手たちは、サッカーというよりもテコンドーをしていたね」
だが、それを聞いたホ・ジョンムも黙ってはいなかった。今年1月のFMラジオのインタビューでこう反論している。
「マラドーナ監督は突然、とんでもない発言をする人ですからね。当時は我々の実力が足りなかったのはもちろんですが、大敗しないためにも強い当たりで対抗せねばなりませんでした。だからといって、私たちがサッカーをしていなかったとは思いません。私はマラドーナ監督のように手を使ったりしませんから」