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マラドーナに「テコンドー」と揶揄された韓国サッカー 86年メキシコW杯で生まれた因縁と勲章
posted2020/11/28 11:01
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph by
Getty Images
手元に1枚の写真がある。赤のユニフォームの韓国人選手が、マラドーナの左足に思い切りタックルを浴びせている。そこに写るマラドーナのゆがんだ表情がなんとも痛々しい。
写真の裏には「1986年メキシコ・ワールドカップ グループリーグ第1試合 アルゼンチン対韓国」と書かれている。
当時の映像を再生してみると、それがどのようなシーンであるのかが分かった。そして、タックルを浴びせているのが現韓国代表監督のホ・ジョンムであることも。
前半5分。ハーフウェイライン右からアルゼンチンのバチスタが、ペナルティーアーク中央で待ち構えるパスクリにクロスボールを上げた。それをパスクリが胸で落とすと、走りこんできたマラドーナが突破を試みようとした。そのときだ。ホ・ジョンムがマラドーナを目がけて、凄まじい勢いで突っ込んだ。
マラドーナは左ひざを抱えて倒れ、顔をゆがめながらもがき苦しんだ。そのシーンだけを見れば、ホ・ジョンムの悪質なプレーと判断されるのは間違いない。
主審はファウルの笛を吹いたが、イエローカードは出さなかった。ホ・ジョンムがバウンドする瞬間にボールを蹴りだし、その勢いでマラドーナと衝突していたのをよく見ていたのだ。だが、当時の海外メディアはその写真を掲載し、「韓国はピッチの上でテコンドーをした」と評した。
あれから24年。マラドーナとホ・ジョンムは代表監督として、ワールドカップの舞台で再び相見えることになった。
噛みついたら話さない犬
「韓国、アルゼンチンと24年ぶりの再戦!」
南アフリカ・ワールドカップの組み合わせ抽選会後、韓国の各種メディアは、アルゼンチンと同じ組になったニュースをこぞって取り上げた。しかも、86年大会でマラドーナをマークしたホ・ジョンムの“過去と因縁”にスポットを当てた。
現役時代のホ・ジョンムは“珍島犬”と呼ばれていた。韓国で天然記念物に指定されている犬のことで、ホ・ジョンムの生まれ故郷である全羅南道の“珍島郡”に由来する。最後まで試合を諦めない闘争心と勝負根性にあふれたプレーぶりが、「噛みついたら離さない犬のようだ」と評された。
ホ・ジョンムは80年にPSVとプロ契約を交わして3シーズンを過ごしたあと、国内クラブでプレーし、韓国代表にも欠かせない存在となった。86年に現役を退き、その後はKリーグクラブの監督や代表コーチを歴任し、98年には韓国代表監督になった。そして07年12月に2度目の代表監督に就任した。