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他球団スカウト「あぁカープに獲られた!」「1番のビックリ指名はDeNAの…」 ドラフトウラ話【広島・DeNA編】 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2020/11/12 17:04

他球団スカウト「あぁカープに獲られた!」「1番のビックリ指名はDeNAの…」 ドラフトウラ話【広島・DeNA編】<Number Web> photograph by Jiji Press

広島から4位指名を受けた小林樹斗(智弁和歌山高)

他球団スカウト「カープにやられた!」

 今年の「カープドラフト」のハイライトは、4位で智弁和歌山高・小林樹斗(投手)が獲得できたことだろう。

 去年の今ごろの“様子”だと、指名はあり得なかった。体が開いてボールが早く見えてタイミングがとりやすくなっていたから、140キロ前後出ていても、よく打たれていた。

 この夏、そのフォームが別人のように変わって、投球内容もやはり“別人”だったから驚いた。いわゆる「ヒップファースト」――左のお尻と左半身から踏み込んできて、おそらく本人の意識が下半身に向いていたのがよかったのだろう、上体が力まなくなった。

 結果として、“7”ぐらいの力感で、“9”のボールが投げられるコツのようなものを会得した。それが、この夏に私が見た「変身版・小林樹斗」だった。

 別の表現をすれば、「140キロの力感で150キロが投げられる」。このコツを覚えたら、投手は強い。打者はことごとく速球に差し込まれ、振り出しのタイミングを失する。

 今なら、巨人・菅野智之、阪神・西勇輝、楽天・涌井秀章……オリックスのエース当時の金子弌大など、まさにこのタイプだ。

 無駄に力まなくなったから、変化球の球持ちもよくなって、スライダー、カーブ、フォーク……いずれも、変化点が打者に近くなり、コントロールも安定した。

 これほどの投手が「4位」。繰り上げ1位ぐらいで名前が挙がってきても、ぜんぜんおかしくない。それほどの快腕だ。

 あれっ……と思って、ちょっと調べてみた。「高校生投手」というカテゴリーで上から数えてみたら、

 高橋宏斗(中京大中京・中日1位)
 山下舜平大(福岡大大濠・オリックス1位)
 中森俊介(明石商・千葉ロッテ2位)
 松本隆之介(横浜高・DeNA3位)
 小林樹斗(智弁和歌山・広島4位)

 ちゃんと、「BIG5」に入っていた。

「ウチは、3巡目が終わったところで、気がついてたんですよ」

 小林樹斗を「4巡目」で釣り落としたスカウトが悔やむ、悔やむ。

「ええっ!て、みんなで驚いて、来るな、来るなよ、って念じてたんですけど……カープにやられた。(山下)舜平大、元謙太、来田(涼斗)で来たから、高校生路線でオリックスかな、とか。西川遥輝(智弁和歌山OB)がいるからハムかな、とか言いながら、どっちも来ないから、こりゃあしめた!と思ったら、カープですよ!」

 こういう事、ドラフトでは「あること」だという。

「今年は、即戦力系の投手がすごくたくさんいたでしょ。どこも、上位は競ってそういう投手を指名してるうちに、いつの間にか、“高校生”が後回しになってしまった。小林なんて、完全に盲点になってましたよね」

【次ページ】 【DeNA編】「いちばんビックリした指名ですか?」

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