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【ドラフト】オリックス3位・来田涼斗、小6時の“立ち姿”に惚れた女性スカウトが明かす「すごい巡り合わせ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/10/30 11:03
オリックスから3位指名を受けた来田涼斗(左)。明石商で共に戦った中森俊介はロッテから2位指名を受けた
担当した乾スカウトも安堵
今年は、4季連続の出場が決まっていたセンバツがコロナ禍で中止に。夏の大会では思うように結果が出ず、プロ志望届の提出に迷いもあったが、10月26日、オリックスから3位指名された。
来田本人はもちろん、家族も、恩師である明石商の狭間善徳監督も、喜び、安堵したことだろう。
それともう1人、オリックスの乾絵美担当スカウトも。
「本当に、ホッとしました」と胸をなでおろした。
今年日本プロ野球界初の女性スカウトとなった乾に、以前、選手のどこを見るのかと尋ねると、「まずは立ち姿ですね」という答えが返ってきた。
その“立ち姿”が目に留まった選手は?と聞いた時、名前を挙げたのが来田だった。
小6ですでに光っていた“立ち姿”
来田と乾の出会いは6年前。まだ来田が小学6年生の時だった。当時、小学生を対象としたアカデミーの指導をしていた乾は、オリックス・バファローズカップという大会に出場していた来田を見て、目を奪われた。
「来田君が打席に立っている姿を見て、『うわ、この子すごいな』と思ったのが一番最初の印象です。小学生でこんな雰囲気を出す選手がいるんや、と強烈に印象に残りました。普通はピッチャーが投げて、それに対してバッターが動くんですけど、来田君が打席で構えると、バッター主導になるというか、ピッチャーが動かされているというか。来田君のペースに相手が巻き込まれる。そういう雰囲気を感じた選手です」
オリックスジュニアの選考を行う際に、「この子は絶対に選考会に呼んでほしい」と乾が猛プッシュ。その選考会で、当時オリックスジュニアの監督を務めていた元近鉄の羽田耕一氏が、来田のフルスイングを一目見て、「この子は取ろう」とメンバー入りを決めた。
オリックスジュニアで直接指導をするようになると、来田の野球以外の人間性にも惹きつけられた。
「どんな時もこちらの目を見て、笑顔で話を聞いてくれる。お父さんお母さんに対しても、小学6年生ぐらいになると、恥ずかしがって横柄な態度をとったりする子もいるんですが、来田君は家族に対してもいつも優しく接していました」
小学校を卒業してからも、来田はオリックスジュニアの後輩の応援にきて近況報告をしてくれたり、高校進学の際は「明石商業に進みます」とわざわざ報告にきた。「すごくしっかりしているなと思いましたね」と乾は振り返る。