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【ドラフト】オリックス3位・来田涼斗、小6時の“立ち姿”に惚れた女性スカウトが明かす「すごい巡り合わせ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/10/30 11:03
オリックスから3位指名を受けた来田涼斗(左)。明石商で共に戦った中森俊介はロッテから2位指名を受けた
「当日までどうなるかわからない」
昨年12月にスカウト就任の打診をされ、引き受けると決めた時、真っ先に浮かんだのは来田のことだった。
「次はちょうど来田君が高校3年生の年。すごい巡り合わせだし、絶対に欲しいなと思いました」
この1年はスカウトとしての目で見つめ、間違いないと確信。スカウト会議では懸命にプレゼンした。
「野球の技術的な部分や高い身体能力はもちろんですが、甲子園で先頭打者ホームランとサヨナラホームランを打つなど、下級生の頃から大きな舞台で活躍できる強い星の下に生まれている。スター性というか。地元の選手でもありますし、周りから応援してもらえて、来田選手を見たいから京セラドームに行きたいなと思ってもらえるような選手に成長すると期待しています。そこは今のオリックスに足りないところ。チームに絶対に必要な選手です」
そう何度も何度も推した。その結果リストアップはされたが、「ドラフト当日はどうなるかわからない」とも言われていた。
乾にとって「最高の誕生日プレゼント」
今年のドラフト会議は新型コロナウイルス感染防止のため、各球団が個別の部屋から指名するかたちで行われた。その部屋には湊通夫球団社長、福良淳一ゼネラルマネージャー、中嶋聡監督代行、牧田勝吾編成部副部長ら6人だけが入り、乾は大阪の事務所で待機した。ドラフト会議が始まる直前まで、大阪と東京をつないでリモートでの最後のスカウト会議が行われたが、ドラフト会議が始まってしまえば、あとは現場に託すしかない。
乾は中継映像を見守りながら祈った。3巡目指名までの時間が、果てしなく長く感じられた。
他の球団が来田を指名するのではないか。残っていたとしても本当に現場で来田の名前を入力してくれるのだろうか。即戦力に舵を切るのでは……様々な不安が渦巻いた。
「心配で仕方がなかったです。頼む頼む頼む……って、もう祈るしか、神様にお願いするしかありませんでした」と苦笑する。
そして無事に、来田は3位でオリックスに指名された。やはり2人の縁は太かった。
しかもドラフトが行われた10月26日は乾の誕生日。「最高のプレゼントでした。誕生日だから、神様がプレゼントしてくれたのかな」と笑う。