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【引退】23歳五十嵐亮太vs巨人最終打席の松井秀喜「全球ストレート」で50号はあまりに強烈だった 

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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photograph byKyodo News

posted2020/10/25 11:00

【引退】23歳五十嵐亮太vs巨人最終打席の松井秀喜「全球ストレート」で50号はあまりに強烈だった<Number Web> photograph by Kyodo News

引退する五十嵐亮太はその豪快なストレートで数々の名勝負を生み出した

決定的だった米野の落球に松井は…

「あの飛球のことはよく覚えています。亮太さんは松井さんとの真剣勝負を楽しんでいるようでした。球も速いし、コントロールも安定していて、気迫も集中力もすごかったんです。そして松井さんのスイングスピードもめちゃくちゃ速かったんです……」

 フライが上がった瞬間、彼はすぐに落下点でボールを待ち構えていたという。

「落下点でボールが落ちてくるのを待っていました。でも、なかなか落ちてこない。“あれ、なかなか落ちてこないな”って思いながら待っていました。よく、“ドームのフライは屋根と同化して見辛い”と言われますけど、このときはハッキリと見えていました。だから、ボールを見失ったわけではありません」

 

 ボールはハッキリと見えているのに、なかなかボールが落ちてこない。普段、練習では経験したことのない高すぎるフライに米野さんはとまどってしまった。

「それで、“あれ、こっちなのかな?”と思って、少しベンチ寄りに移動したんです。そうしたら、僕が最初に構えていた位置にボールが落ちてきて、うまくキャッチできませんでした。亮太さんに、本当に申し訳ないことをしてしまって……」

 命拾いしたのは松井だった。打席の中で小さく微笑んでいるようにも見える。スタンドを埋め尽くした多くの巨人ファンから安堵の歓声が沸き起こる。こうして投じられた6球目。空振り狙いのアウトコース高めのストレート。球速は150キロを計測していた。

「決して甘いボールではなかったと思います。五十嵐さんは要求通りのボールを投げてくれた。それを松井さんが上手に左中間に運んだ。そんな一発だったと思います」

 18年前の出来事にもかかわらず、米野さんの記憶は鮮明だった。

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