令和の野球探訪BACK NUMBER
令和のドカベンは2度目のドラフトで呼ばれるか? 特大アーチ、軽快な守備、ご褒美は焼肉
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/10/20 17:01
神奈川大学リーグ記録となる1季8本塁打を記録した桐蔭横浜大・渡部健人。巨漢ながら機敏な守備も魅力だ
高校時代から異質だったの打球音
筆者が渡部の存在を初めて知ったのは、高校2年の秋だ。チームの取材で訪れた際に1人だけ異質の打球音で鋭い打球を飛ばすドカベン体型の選手がいた。それが渡部だった。日本大学や青森山田高校などで指導に携わり、教え子の中にはプロ選手も複数いる日本ウェルネス高の美齊津忠也監督は「打撃は私が指導してきた中で5本の指に入る選手です」とまで評した。
最後の夏も東東京大会4回戦で2打席連続となる本塁打を神宮球場のスタンドにぶち込んだ。持ち前のパワーを発揮し、チームは創部史上初となる東東京大会16強入りを果たしている。
進路は「プロ一本」、ドラフトは2度目
桐蔭横浜大でも1年春からレギュラーの座を掴み、2年時は春秋ともに4割を超える打率を記録。昨年の大学選手権では再び神宮球場で本塁打を放った。そして迎えた最終学年、「今年は何が何でもという気持ちです」と2月上旬に語っていた通り、早くから「プロ一本」の進路を打ち出し、社会人チームからの誘いはすべて断った。
プロへの挑戦はこれが2度目だ。高校時代もプロ志望届を提出したものの、2016年のドラフトでは支配下での指名はなく、大学進学の道を選んだ過去がある。
それだけに今季に懸ける思いは強かったが、春は新型コロナウイルスによってアピールの場を奪われ、全日本大学野球選手権や神奈川大学リーグは次々と中止になった。しかし、渡部はそれでも腐ることはなく、再開の時を待った。
中本牧リトルシニア時代のチームメイトで幼なじみでもある今松将太(大正大)と自宅近所の公園でキャッチボールやティーバッティングを行った。彼もまた同じくプロ志望届を提出している。
その積み重ねに加えて1年時からの経験も存分に生かした。意識したのは「8割の力でのスイング」。力が入りすぎてはせっかくのパワーも台無しだ。足を上げて打つフォームも大田泰示(日本ハム)を参考にし「上げた足をその場で落とすイメージ」と無駄に勢いをつけないようにした。
それがこの秋のリーグ戦でハマりにハマった。