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令和のドカベンは2度目のドラフトで呼ばれるか? 特大アーチ、軽快な守備、ご褒美は焼肉
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/10/20 17:01
神奈川大学リーグ記録となる1季8本塁打を記録した桐蔭横浜大・渡部健人。巨漢ながら機敏な守備も魅力だ
スカウトが見守る中で迎えた最終打席
9月22日の対横浜商科大2回戦では5打数4安打7打点の大暴れ。横浜スタジアムのバックスクリーンに飛び込む本塁打に加えて二塁打も右に左に計3本を放った。さらにその後も本塁打を量産し、2試合を残して7本塁打。当時神奈川大の岸川雄二氏(元西武)が持つリーグ記録の8本塁打まであと1本と迫り、記録に並んだ10月18日は奇しくもその岸川氏が指揮を取る神奈川大との対戦だった。
この日の神奈川工科大学KAITスタジアムのネット裏には3球団のスカウトの姿。今季は数試合を除いて無観客試合となっているだけに、否が応でもその存在には気づく。それでも渡部は「チームのことだけを考えました」と第1打席では追い込まれてから粘りに粘った。最後は見逃し三振に倒れるも、以降に打線が爆発し、一挙9得点のビッグイニングの呼び水となった。
第2打席には四球を選び、第3打席では身軽に疾走して内野安打。第4打席はサードゴロに倒れたが、この日最後になる可能性の高かった8回の第5打席でこれ以上ないアピールとなる特大の一打を放ったのだった。
アピールは走攻守すべて
チームの2季ぶり12回目の優勝が決まり、桐蔭横浜大の齊藤博久監督も「あんなに打っていても浮つくところもなく、しっかりと振り込むなど謙虚にやってくれました」と称賛。渡部も「チームのためにとずっと思っていたので優勝できて嬉しいの一言です。(ドラフトに向けては)走攻守全部をアピールしようとやってきました」と充実の表情を浮かべた。
10月26日のドラフト会議前最後となる24日の鶴見大戦で、リーグ新記録の金字塔を打ち立てるのか。4年越しの雪辱に向けて大きな体に大きな希望を持って運命の時を待つ。