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安部裕葵と同じ「目を奪われる選手」 鹿島スカウトが明かす昌平高校“2枚獲り”の真相
posted2020/10/03 11:02
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
また、鹿島アントラーズが動いた。
すでに来季加入選手として明治大学からDF常本佳吾とGK早川友基、大阪体育大からDF林尚輝の3人の大学生の獲得を発表していたが、9月30日に昌平高校からMF須藤直輝と小川優介の2人の加入内定をリリースした。
これで来季の新加入選手は5人となった。
鹿島は今季、FW染野唯月、MF荒木遼太郎、松村優太、GK山田大樹と、4人の高卒ルーキーが加入している。近年は生え抜き選手の早期の海外移籍なども重なり、思い切った獲得に至った経緯がある。今回の大学生3人に関しては、チームの年齢バランスを考えても即戦力候補としての期待が窺え、若手補強はひと段落かに思われた。それだけに同じ高校からの同時獲得(DF植田直通、FW豊川雄太を大津高校から獲得した以来)には少なからず驚きもあった。
進学か、プロか「大学はいつでもいける」
須藤に関しては、「是が非でも欲しい存在」だったことは言うまでもない。高校3年生の世代では“顔”とも言われる目玉選手の1人だった。
大宮アルディージャジュニアユースで10番を背負い、早くからその才能に期待が集まっていた須藤は、ユース昇格を断り、同じ埼玉県の昌平高に入学すると、1年から10番を託された。卓越した個人技とアジリティーに加え、広い視野を持ち、情報収集能力と処理能力に長けたアタッカーだ。主にトップ下、サイドハーフとしてアタッキングエリアで才能を輝かせてきた。
当然のように早い段階でJクラブのスカウトたちは獲得に向けて動き出していたが、以前当連載で紹介したように、学業優秀でもある須藤は今春まで大学進学との狭間で大きく揺れていた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた自粛期間が明け、鹿島ともう1つのJ1クラブから正式オファーが届いたことで、夏にプロへ進む意思を固めたという。
「8月に(Jクラブの)練習こそ参加できなかったのですが、施設見学だけはすることができました。そこでプロの雰囲気を感じたことで、『大学はいつでもいけるな』と思ったんです。それにサッカー推薦で大学に進学すると、学部も決められてしまったり、自分が学びたいことを学べないとも思ったんです。プロのキャリアを終えてから、自分が専攻したい学部に行ってやりたいことを学んだ方が、絶対に自分にプラスになる。プロをやりながらも、意識を高く持てば語学の勉強もできるし、自立してやっていきたいなと思った」