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安部裕葵と同じ「目を奪われる選手」 鹿島スカウトが明かす昌平高校“2枚獲り”の真相
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/10/03 11:02
鹿島アントラーズ加入が発表された昌平高校の須藤直輝(右)と小川優介。ともに2年生ながら昨年度の選手権8強に貢献した
3年後に期待、「血」を引き継ぐ存在に
プロになる覚悟を決めたことで心身ともにさらに成長した須藤、そしてメキメキと頭角を現した小川。椎本からすれば、鹿島のエンブレムをつけてプレーする2人の姿がより具体的に浮かび上がっていったはずだ。
今季は大卒を3名、昨季は4名の高卒選手を獲得していることもあり、“2枚獲り”は決して容易ではなかった。しかし、椎本は覚悟をもって決断した。
「クラブの強化責任者にお願いしたら、快く承諾してもらった。小川に関してはいかに鹿島で育てていけるか。今季加入した高卒の4選手と来年入る選手たちが、3年経った時に生え抜きの選手として鹿島の血を引き継いでいってくれるんじゃないかなと期待しています。鹿島の魅力は新卒の選手を生え抜きで育てて、世代交代をしっかりと遂行していく。それをクラブの伝統の1つとしてずっと大事にしてきました。ルーキーで獲得した選手が主軸に育っていくクラブにもう一度なるというヴィジョンが鹿島にはあります」
「腰が抜けそうになるくらい」
大きな期待を背負う小川だが、本人にとってこのオファーはまさに「青天の霹靂」だった。
「8月下旬の練習終わりに藤島(崇之)監督に呼ばれて、『凄いところからオファーがきたぞ』と言われて、鹿島アントラーズの名前を聞きました。正直、監督が何の話をしているのか分からなかったし、腰が抜けそうになるくらいびっくりしました」
この時、小川はすでに関東1部の大学から誘いを受けていた。頭に進学しかなかったのは、同期のエースの須藤、そして先日アルビレックス新潟に内定したFW小見洋太の2人がいたから。「彼らこそプロにふさわしい選手だと思っていて、僕はその部類に入っていないと思っていた」と謙遜する。
自分はないと思っていたところに突如やってきた大きなチャンス。それを断る理由は1つもなかった。
「僕みたいな選手が日本のトップクラブであるアントラーズに行っていいのかと正直思いました。でも身体の小さい僕を必要としてくれたことが素直に嬉しかったし、アントラーズに選ばれたということは、僕が何かを持っているのだと信じたい。そこに自信を持たないと、この先やっていけないと感じたので、覚悟を固めました」