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どうして強がって見えるのか……「生意気なサッカー選手・内田篤人」を追い続けて見てきたこと
posted2020/10/04 11:02
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Takuya Sugiyama
いつの試合だったかは忘れた。
鹿島だったのか、代表戦だったのか。試合後だったのか、練習後だったのか。
場所はミックスゾーンだ。内田篤人の周りを多くの記者が囲んでいた。
ルーキーイヤーで強豪鹿島のスタメンを手にし、日本代表にもいち早く招集され、ポジションもつかんでいる。彼の注目度の高さは、その記者の数でも容易に計り知れた。私は、その輪には加わらず、少し離れた場所で彼の表情を見ていた。ある記者の質問が、失点に及んだ。彼が関わったとされる失点シーンだった。
「たとえ、内田が関係しての失点だったとしても、そこから時間が経った今、またそれを蒸し返すのか?」
私はそんなふうに思いながら、彼の言葉を待った。そのとき、内田がどう答えたかは聞こえなかったけれど、その顔色が変わったと感じ、少し近づいて彼の顔を見た。その表情からは、内田が強がっていることが伝わってきた。
日時や状況など、あいまいな記憶で申し訳ないが、これが私が内田篤人という選手に「ひっかかった」瞬間だ。
「生意気じゃなかったら、とっくにサッカーをやめている」
いわゆる鹿島のイケメン枠で、記者対応もそつなくこなし、ひょうひょうと受け答えする。ピッチ以外の彼にはそういう印象を抱いていた。プレーにもそういうそつのなさが感じられ、巧くて頭のよい選手であることは理解できたが、まだまだ、私にとっては淡泊な存在でしかなかった。
しかし、記者を前に強がって見えた内田に「おもしろいな」と今までにない興味が生まれた。
取材する機会を得て、長く付き合うことになる選手たちには、「ひっかかる」瞬間があるものだ。ひっかかるというのは言葉が悪いだろう。いわゆる興味を持つ瞬間だ。それは言葉であることもあれば、柔らかいボールタッチのこともあれば、チームメイトやジャーナリストに対するふるまいだったりもする。もちろん、これは私の主観的な話でしかないが、取材を重ねるうちに新たな興味に上書きされて、最初の「ひっかかり」を忘れてしまう選手もいるけれど、このときの内田のことは、その後何度となく思い出された。
その後、対面でのインタビューを行う機会にも恵まれた。2009年9月のインタビューより。
――私の内田くんというのは、「生意気」であり、「強がっている」という印象なんですが……。
「でも、ひとりで部屋で考えているときは、違うから。シュンとして、いい子なんだ。内田君は。人前に出ると意地を張っている」
――生意気さや強がりが支えている?