プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・澤村拓一トレードの裏側 飼い殺しより“引き算”したほうがいい
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/09/12 11:40
キャンプ中、澤村を指導していた原監督。特に目をかけていた選手の1人だったと言えるだろう。
実は昨年も春先に、ある球団の左の外野手と……
実は昨年も春先に、ある球団の左の外野手との交換を持ちかけたことがあった。
その話が破談になった直後に、澤村が一般人と酒席でトラブルを起こしたことが週刊誌で報道され、他球団が獲得に二の足を踏むようになった。
そうしていつの間にかトレード要員からも外れてしまっていた。
今季もまたリリーフでの再生を図ったが、結果は惨憺たるもので、先発にも挑戦させたがそれもダメ。二軍に落ち、一軍に上がるメドもたたないままに三軍で燻っていた。
そこに獲得に名乗りをあげたのが、ソフトバンクと優勝争いをしているロッテだった。
新型コロナ禍での特別ルールを活用
今季は新型コロナウイルスの感染拡大で特別ルールが採用され、巨人のトレードはそのルールを活用しての動きともとれる。
外国人選手の出場選手登録枠が従来の4人から5人に拡大されたことでウィーラーを獲得。一軍登録も31人、ベンチ入り人数も26人へと拡大されて、その増えた人数を中継ぎの強化に充てるために高梨を獲得した。
楽天とのトレードは、この特別ルールを活用した巨人にとっては足し算の補強だった。
しかし澤村の移籍は、優勝争いの中で中継ぎ陣の強化という目の前の補強をしたロッテにとっての足し算のトレードだ。一方、実績のある主力投手を出した巨人にとっては、いまは澤村を生かすために、あえて成立を目指した引き算のトレードだった。
交換要員としてロッテから獲得したプロ6年目の香月一也内野手は打率1割7分5厘の1ホーマーと、一軍での実績はほとんど皆無である。
ただバットをしっかり振れて、パンチ力のある左の野手は、巨人には珍しいタイプという評価も耳にする。いつかチームにとっての足し算となるかもしれない。そんな期待を込めてのトレードだったのである。