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MLSがリーグMX合併で巨大リーグに 北米サッカー界で起きている激震
text by
トマン・グバンThomas Goubin
photograph byL'Equipe
posted2020/09/09 07:00
メキシコのトップリーグ・リーガMXのエンリケ・ボニラ代表(写真左)とMLSのコミッショナーであるドン・ガーバー。両者の利害は完全に一致したようだ。
アメリカ側は新たな客層の獲得を見込んでいる
いずれにせよ経済面では、MLSもリーガMXも統合がもたらす効果は膨大なものになると確信している。
MLSにとってリオグランデ(メキシコとテキサスの国境を流れる川)以南のチームとの対戦は、観客動員とテレビ視聴者の劇的な増加を見込めるうえに、クラブの知名度を上げる大きなチャンスにもなる。
リーガMXはアメリカでは、プレミアリーグ以上の人気を誇る最強のサッカーコンテンツである。人気面で遥かに及ばないMLSにとって、およそ3500万人のメキシコ系アメリカ人を新たなサポーターとして獲得するのはさらなる発展の契機となる。
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近年、数千万ドルをかけてカルロス・ベラ(ロサンゼルスFC)やチチャリート(LAギャラクシー)、ロドルフォ・ピサロ(インテル・マイアミ)といったメキシコ代表のスター選手たちを獲得したのもそのためであった。
メキシコ側は売上の増加を見込んでいる
他方でメキシコ側のメリットもハッキリしている。
アメリカにおけるメキシコサッカーの人気の高さは、すでに多大な経済的恩恵をメキシコにもたらしている。
国際Aマッチの多くは今もアメリカで行われ、ほぼすべてが満員札止めである。リーガMXのクラブはアメリカでミニツアーをおこない、ドルをかき集めるのに余念がない。新リーグの創設は、その機会をさらに高めるだろう。
またピッチの上では、メキシコのライバルたちと日常的に対戦することにより、MLSのクラブのレベルが上がっていくだろう。何しろメキシコ勢は、北中米カリブ海チャンピオンズリーグのタイトルを、この14年間独占しているのであるから。
新リーグは世界のヒエラルキーにおける北米の地位を上げ、それが2026年に全世界の目をこの地域に集めることに繋がっていく。ただ……かつてはディエゴ・マラドーナ(2018年9月~2019年6月、ドラドス・デ・シナロア)も監督を務めたクラブがあったリーガ・デ・アセンソ(メキシコリーグ2部相当/新リーグ創設後は23歳以上の選手登録が制限されることが決定している)が、単なるU-23リーグになり下がってしまっていることに誰が気づくだろうか……。