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叫ぶ内田篤人、目を閉じる内田篤人。
写真で振り返る「22番」の冒険記。 

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千葉格

千葉格Itaru Chiba

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photograph byItaru Chiba

posted2020/08/26 20:00

叫ぶ内田篤人、目を閉じる内田篤人。写真で振り返る「22番」の冒険記。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

写真を見返すと、仲間たちと喜ぶ姿が多かったと千葉氏。内田を撮り続けることによって、自らのスタイルを形成していった。

CLアンセムに目を閉じる内田。

 その後もヨーロッパやドイツの強豪と戦う姿を撮り続けた。シャルケと共に自分も遠くの街を訪れ、いくつもの試合で右サイドにレンズを向けた。

 ロンドンでのアーセナル戦。試合後にスタンドのファンと喜びを分かち合う選手たちの姿を撮っていると、「やったぜ」という日本語が小さく聞こえた。夜行バスで一晩かけて向かったスロベニアのマリボル。勝利後に撮った写真の中では、GKフェーアマンの肩に担がれた青年が笑っている。名前も忘れてしまった田舎街のスタジアムは、アイスを食べている少年少女が少し手を伸ばせば選手に触れられそうなほど小さかった。

 自分にとってCLといえば、中に入るとコンクリートの匂いがするフェルティンス・アレーナ。無数の野太い声援と共にCLアンセムがスタジアムに響く時、ファインダーの中には、必ず左から3番目に整列して目を閉じる内田がいた。

サイドバックは写真映えしない。

 すごく正直に言うと、サイドバックはそれほど写真映えしないポジションだ。派手なゴールを決めることは少ないし、スーパーセーブで観衆を沸かすこともない。たとえそうだとしても、最高のステージに立って、冷静ではあっても熱く勝利を求める姿に引きつけられた。

「写真を撮ることが仕事だから」なんて言葉を言い訳に試合に足を運び、内田という選手が静かに生み出すストーリーをカメラに収めることが、いつの間にか楽しくなっていた。

 青いユニフォームの写真と共に、色あせることがない記憶がどんどん増えていった。

 少しずつだが、いつも自分の姿を狙うカメラマンの存在を認識してくれるようになった気がした。ものすごく優しい人だから、もしかしたらもっとずっと前から認識してくれていたのかもしれない。

【次ページ】 「膝……もう治らないんだよね」

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