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八村塁、NBA1年目の総括&現地評。
“夢が叶う場所”で得た財産は来季へ。
posted2020/08/24 11:40
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
David Dow/NBAE via Getty Images
まるで夏休みが待ち切れない少年のようだった。
8月13日、フロリダ州オーランドの通称“バブル”で行われたボストン・セルティックス戦後のこと。今季最後のゲームを終えたワシントン・ウィザーズの八村塁は、リモート会見の終了を告げられる前に、「ありがとうございましたあ!」と言って席を立ったのだった。
まだ子供っぽさを残した八村らしさが顔をのぞかせた瞬間。その後に質問するつもりだった記者は気の毒ではあったが、この時ばかりは周囲も目くじらを立てるべきではなかったのだろう。これまで八村はすべての試合後にメディア対応してきたし、そもそもこの日は右太腿の痛みで試合に出場していなかった。莫大な重圧を背負い続けた1年が終わり、一刻も早く解放感を味わいたかったのだとすれば理解はできる。
「ルーキーシーズン、本当に長くて、いろんなことがありました。振り返ると、僕としてもいろいろ学べた時期でしたし、これからもこの1年間にやったことが役に立つ。無事に終われたことに感謝し、次のシーズンに向けて頑張りたいと思います」
再開後はNo.1オプションに。
最後の会見で八村が残した言葉はシンプルだが、何よりも実感がこもって響いてきた。
昨年6月のドラフトで指名されて以降、怒涛のようだった1年強。新型コロナウイルスのおかげでルーキーシーズンは予定通りの4月に終わらず、真夏のフロリダで戦いは再開された。NBAがディズニー・ワールドに作り上げたバブルに入って以降も、騒がしい日々は続いていった。
ブラッドリー・ビール、ダビス・ベルターンスといった得点源が不参加だったため、再開後は押し出されるようにチームのNo.1オプションに就任。練習試合から7月31日のフェニックス・サンズ戦までは全試合でチーム最多の得点をマークし、当初はエースの役割を過不足なく果たしているように見えた。