欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ファン2000人が善意で本拠地工事。
遠藤渓太加入ウニオンの熱が凄い。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/23 11:40
マリノスからベルリンの地へと旅立った遠藤渓太。プレシーズンで積極的なアピールを見せている。
全てのファンが味方を鼓舞する。
2003年以来、12月23日の19時にファンのみんなでクリスマスソングを合唱するためにスタジアムに集うことが伝統になっている。2万8500枚のチケットは毎年、すぐに完売。一致団結の象徴として、クラブとファンには欠かせないイベントだ。
毎試合のように2万2000人のファンでスタジアムが埋め尽くされるが、全員が筋金入りのファンだ。
他クラブの様子を見ると、正直、少なからず温度差が感じられることがある。ゴール裏は熱狂的ファン、指定席は落ち着いてサッカーを楽しみたいファン、メインにはスタジアムの雰囲気を味わいながら自分のペースで応援したいファン、といった区分けが少なからずある。
しかし、ウニオンファンはそうした境を感じさせない。ゴール裏のファンだけではなく、本当にすべてのファンが試合開始から終了までクラブの歌を歌い、味方を鼓舞し、相手にブーイングを送る。
ウルス・フィッシャー監督は「このスタジアムにおけるファンからのサポートは本当にすごい。とてつもなく大きな力になるんだ。ここでプレーしていたら、不可能なんてないと思えるくらいにね。チームスピリットと団結力。それらが、我々を今いる位置へ運んでくれた。ウニオンは、心の力とともにあるクラブだ。ファンとの密接な関係性はウニオンというクラブが持つ最大の強みだ」と感服していたことがある。
現会長も熱狂的ウニオンファン。
役員も熱い。現会長のディルク・ツィングラー自身も熱狂的ウニオンファンで、ずっと観客席で戦っていた人物だ。昨年、1部16位のシュツットガルトとの入れ替え戦を制して1部昇格が決まった日、「この瞬間を40年間待ち続けていたのだ!!」と、感無量の思いを余すことなく表現していた。
あの日、大人たちは子供のように涙を流して、喜びの叫びを高らかに放ち続けた。幸福が胸を満たし、突き上げたこぶしが天をつく。
選手もファンもスタッフも関係ない。チームマネージャーのオリバー・ルーネルトがインタビューを受けていると、選手らが駆け寄り、「ルーネルトさん! 真面目な話をするのはもうやめよう。ビールはどこ?」と肩を組み、抱き合い、もみくちゃになりながら、喜びを分かち合い続けた。