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FA杯制覇もアーセナルがゴタゴタ。
強化部長解任に長引くエジル問題。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/08/25 19:00
FA杯制覇で苦悩のシーズンを締めくくったアーセナルだが、2020-21シーズンも前途多難なのだろうか。
アシストが伸び悩んだエジルは?
2019-20シーズンも、エジルは周囲の期待を裏切った。23試合・1ゴール・2アシスト。もちろん、一概に彼だけが悪いとは断言できない。ピッチに立てば90分に2~3回は決定的なパスを出せる。エジルのセンスに反応できなかったFWにも責任の一端はある。
ただ、プレースタイルを頑なに変えようとしないエジルにも非はある。ミケル・アルテタ監督が、前監督のエメリが、「ゲームプラン、相手チームのプレー強度を踏まえ、エジルをベンチから外した」とメディアに説明しても、なんの刺激にもならなかったようだ。
攻守の切り替えが遅く、時おりピッチ上の傍観者になる。ボールを奪われても、取り返そうとしない。近代フットボールに求められるプレー強度、走力に改善の余地が見られないのだから、首脳陣の人選から外れるのは当然だ。
また、FAカップ決勝のメンバーから漏れると、トルコで夏季休暇に入った。クラブの了解を得ていたとはいえ、同僚やサポーターの理解は得られないだろう。子どもじみている。
「いつアーセナルを出ていくかは」
それに加えてエジルは、問題発言で物議を醸した。
「いつアーセナルを出ていくかは、他人ではなく私が決める」
「ペイカットを拒否したのは私だけではない。なぜ私だけが責められるのか」
「監督、コーチの判断は尊重するが、パフォーマンスをもとに決定すべきだ」
「ウイグル自治区で起きていることに対して抗議しただけだ。中国の人々を批判したわけではない。政治には関与しないというアーセナルの公式コメントには失望した」
エジルの言い分も分からないではないし、彼にも権利はある。ただ、内部批判と受け取られかねない案件を、なぜメディアに吐露したのだろうか。私はいっさい悪くない、すべての非はクラブ側にあると自己弁護しているように聞こえてくる。
この1年、エジルとアーセナルは常に緊張状態にある。新時代のために血の入れ替えを図りたいクラブ側は、三十路を迎えたエジルを見切ろうとしてきた。32万ポンド(約4480万円)もの週給を、ベンチにも入れない選手に支払うのは無駄な出費だ。