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愛される杉谷拳士の礎と成長曲線。
ベテランの目利きでさえも覆された。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2020/07/29 08:00

愛される杉谷拳士の礎と成長曲線。ベテランの目利きでさえも覆された。<Number Web> photograph by Kyodo News

不振にあえぐチームの中で気を吐く杉谷拳士。22試合に出場して打率.306、本塁打2(7月28日時点)。

「人間って分からないな、不思議だよね」

 入団2年目の2010年には、芽は出た。イースタン・リーグで年間133安打をマークして、同リーグ最多安打記録を12年ぶりに更新したのである。翌年には一軍初出場も果たした。いまだレギュラーを奪取できずにいるが、有事に起用されるユーティリティー・プレーヤーとして現在、一軍での持ち場を確固たるものにしている。

 プロへと誘った1人の山田スカウト顧問は、愛情を込めて言う。

「テストの時は、ただ声だけがデカくてね。(帝京高校の)前田(三夫)監督が『いい選手ですから』って言うんだけれど、そうでもないしね。ただ努力をする才能っていうのは、やっぱり必要なのかもしれない。人間って分からないな、不思議だよね。杉谷を見ていて思うよ」

 長年、ファイターズのスカウティングの中心を担ってきたベテランの目利きでさえ想像ができなかった進化の曲線を自力で描き、今がある。

 そんな培ってきたバックボーンが、12年目を迎えた杉谷選手の礎、強みである。

 昨シーズンにはプロ野球選手として一定の水準で活躍をしてきた証しともいえる、国内フリーエージェント(FA)権を取得もした。「今年は、海外FAですよ」と快活に笑うが、歩んできた道は険しかったのである。

 出場機会は少ないが、その限定された時間、空間でのプレー、パフォーマンスで輝く瞬間がある。対極にあるような陰の努力を積み重ねたからこそ、強烈な光を放ち、時にドラマを紡ぐ。

 偶然や運、巡り合わせだけではなく、もちろんコミカルでもない。その根拠になる、一本筋が通った人間ドラマが実在するのである。

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