セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
リベリーが遠征中に空き巣被害。
イタリア泥棒事情は想像の斜め上。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/07/22 07:00
フィレンツェで空き巣被害にあったリベリー。カルチョの国はピッチ外でも集中力を欠いてはならないようだ。
被害から2日後に見せたプロ根性。
リベリーはプロ根性の塊だった。
荒らされた自宅を目にした2日後、彼はカリアリ戦に先発出場した。傷心の素振りなど欠片も見せなかった。
昨冬に手術した右足首のせいでフル出場はもはや難しいし、未曾有の過密日程に心を癒す時間もない。それでも、リベリーはビオラの前線で最も危険な男だった。
2トップの際はFWパトリック・クトローネと、3トップではキエーザやFWドゥシャン・ブラホビッチ、MFクリスティアン・クアメなど、ずっと年下のアタッカーたちと組んで、彼らが最もプレーしやすいボールをお膳立てしてやる。
だから、疲弊する戦力のやりくりにどんなに苦労しても、指揮官イヤキーニはリベリーを先発から外せるはずがない。
自分がもし若いサッカー選手で、リベリーと一緒にプレーできたら、さぞ自分が上手くなったような感覚でボールを蹴られるのではないだろうか。
「俺を頼りにするクラブと町がある」
リベリーは敵地で3発快勝した15日の第33節レッチェ戦ではキャプテンマークを巻き、19日の第34節トリノ戦も2-0で連勝。クトローネの2点目アシストも決めて、今年1月以来9試合ぶりのホーム白星の立役者になった。
空き巣被害の後、フランスの同胞でフィオレンティーナの元守護神でもある旧友セバスティアン・フレイは、リベリーに事件の話を聞いた。そして、彼はビオラ・ファンを安堵させるメッセージを自身のインスタグラムに投稿した。
「フランク(・リベリー)はフィレンツェの町を嫌いになったわけでもないし、ビオラを離れる気になったわけでもない。これまでの人生でずっとそうしてきたように、あいつは袖を通すユニフォームにプライドとガッツをもって戦い続けるよ」
リベリーは旧友に応じながら、これ以上ない文面で芸術の都への残留を明言した。
「俺を頼りにするクラブと町がある。それだけで十分だ。ビオラのために戦う、とサインしたときから俺の腹は決まっている。俺は何かにびびって後戻りするようなことはしない。俺はフィレンツェに残る。Viola per sempre(ビオラ・フォーエバー)!」
ビオラ・ファンもイヤキーニ監督もコミッソ会長も、ひとまずほっと胸を撫で下ろしていることだろう。リベリーの自宅には、より強力な防犯システムが設置されるはずだ。