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世界サッカー史上最高の無観客試合だろ!
7月4日の浦和と82歳の「死んでもいい」。
posted2020/07/15 15:00
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph by
(c)A.KONDO/URAWA REDS
7月4日の土曜日、J1が再開した。
その日の午後4時、僕は浦和美園駅から埼玉スタジアムへ向かって歩いていた。
再開カードは浦和レッズ対横浜F・マリノス戦、キックオフまではあと3時間あった。
埼玉高速鉄道の線路に沿って北北西に伸びるいつもの歩行者専用道路、目の前にはいつもと同じように2つの歩道橋があって、その向こうにはやはりいつもと同じようにスタジアムの右半分が見えた。
いつもと違うのは、そこにほとんど人影がなく、聞き慣れた音もなかったことだった。
6年と3カ月前の記憶が戻ってきた。
今年はいけるんじゃないか、と期待する心臓の音、バクバクバク。
今年もダメなんじゃないか、と諦めそうになるため息の音、フー。
まだキックオフまで数時間もあるのになぜか早足で歩いてゆく人々のスニーカーのゴム底がアスファルトと擦れる音、キュッキュッキュッ……。
そうだよ、と僕は再認識する。今日は無観客試合なんだよ。
むかんきゃく、6年と3カ月前の記憶が戻ってきた。
2014年3月24日、その日浦和レッズはJリーグの歴史上初めて無観客試合を開催した。もちろんしたくてしたわけではない。
ことの発端は、あるサポーターがあまり深く考えないでスタジアム内に掲げた横断幕だった。
ジャパニーズオンリー、そこにはそう書かれていた。
日本人以外はゴール裏のスタンドに入ってきてくれるなよ、と。
あっという間に大騒ぎとなった
製作者にさほど深い意図はなかった、そんな弁解も聞こえてきた。
たいていの残念な結末は、いつも無思考な行動から始まるんだ。