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大詰めスクデット争い。ラツィオ&
アタランタの意地vs.サッリの“タマ”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2020/07/10 19:00

大詰めスクデット争い。ラツィオ&アタランタの意地vs.サッリの“タマ”。<Number Web> photograph by Getty Images

ロナウドら多士済々の面々を手懐けながら、ポゼッションを展開する。サッリ監督はユーベで栄光をつかむことができるか。

クリロナが王様の限りは……など雑音。

 サッリは今、“ユベントスの監督”という肩書きの重さを、身をもって体感しているにちがいない。

 C・ロナウドのような惑星最高の選手を指導できる喜びはあるが、もしタイトルを獲り損ねればボロクソに叩かれる。ラツィオに完敗したイタリア・スーパー杯や古巣ナポリにPK戦で敗れたコッパ・イタリア決勝の後、外様の親分は嵐のような猛批判に晒された。

「タイトルを獲り慣れていない田舎者」

「クリロナが王様として君臨する間はサッリのサッカーは不可能」

 親分は反論する代わりに「キ●タマがゴロゴロするわい」とだけつぶやいて、じっと我慢の子で勝点を積み重ねてきた。

 そのユーベもリーグ戦再開後に故障者が続出し、コンディション作りに難航している。中2日、3日の強行日程で進む消耗戦では、選手たちの体力回復が最優先で、戦術修正を施す時間的余裕はない。ただし、そこを何とかするのが業師サッリの腕の見せ所だ。

ディバラとロナウドはどんどん近くで。

 理想とする連動サッカーの完成まではほど遠いのは事実でも、復調したFWディバラをC・ロナウドの近くでプレーさせる新戦法が当たったことで、チームに弾みが出た。

「ディバラとロナウドは、どんどん近くでプレーしたらいいんよ。ほしたら、彼らだけにしかできんスピードで相手を突いてくれるけえのう」(サッリ)

 4-1で完勝した第30節トリノ・ダービーでは、先発したGKブッフォンが648試合目のリーグ戦出場を果たし、パオロ・マルディーニの保持していた「セリエA最多出場記録」を塗り替えた。チームはこれでまた1つ意気を上げた。

 ユーベには鉄人も王様も絶好調の10番もいて、何なら個人能力でねじ伏せられる。

 戦術ではなく戦力で優勝した、と言われるのはさぞ心外だろうが、サッリ親分は余計なことを言ってチームの気勢を削ぐことなく、批判してきた輩たちを見返すときをひたすら待っている。

“今に見ておれ、スクデットを獲った暁には思いの限り放送禁止用語を叫んでやるわい”とか、不穏なことを真剣に考えていそうだが、サッスオーロ戦を挟んでのアタランタとラツィオとの天王山2連戦でそのタガが外れるかもしれない。

 熱くなった親分、頑固者ガスペリーニ、もはやなりふり構わぬインザーギによるヒートアップ必至の直接対決。今季セリエAのクライマックスだ。見逃す手はない。

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