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大詰めスクデット争い。ラツィオ&
アタランタの意地vs.サッリの“タマ”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/07/10 19:00
ロナウドら多士済々の面々を手懐けながら、ポゼッションを展開する。サッリ監督はユーベで栄光をつかむことができるか。
消耗戦なら王者ユーベの方が強い。
体力勝負の消耗戦で、より恩恵を受けるのは全ポジションにスタメン級を複数揃える王者ユーベの方だ。サッリ監督は右ウイングだけでベルナルデスキ、ドウグラス・コスタ、クアドラドの代表プレーヤー3人を使える。
一方、ラツィオのインザーギが第30節のミラン戦で起用できた本職のストライカーは、先発させたコレアたった1人。エースFWインモービレとFWカイセドのレギュラー2人はともに出場停止で、1年目の若手FWアデカニエまで無理やり駆り出さざるをえなかった。ユーベとは雲泥の差だ。
さらに、いかにラツィオの完成度が高くともメンバーが固定されていれば、相手は必ず対策を立ててくる。
ミラン戦では4年前までラツィオを率いていた敵将ピオリに打つ手をことごとく読まれ、本拠地オリンピコで為すすべなく0-3の完敗。ユーベの背中は勝点7差にまで広がった。
インザーギ監督と選手の一縷の望み。
試合後、スタンドで見守っていたインモービレも、ベンチにいたMFミリンコビッチ・サビッチも放心状態で、その視線は宙を泳いでいた。
1月の移籍市場で戦力を新たに獲得できていたら……と嘆いても仕方ない。渋チンのロティート会長と大財閥アニェッリ家とでは、財布の重さも数もちがう。
故障からの復帰叶わぬまま、主将ルリッチはシーズンを終えるだろう。ミラン戦で膝を捻挫したコレアは最低でも2週間安静が必要で、ルーカス・レイバとカタルディの中盤コンビもフル出場にはストップがかけられている。
あれほど瑞々しく精気にあふれていたラツィオは今やまともに先発を組むのすら難しい。悲壮感をたっぷり纏った指揮官は、シニカルな笑いとともに「次の試合はチームドクターと一緒に先発を考えるよ」とジョークを飛ばすが、笑える者はいない。
「これから我々は自分たちのことだけに集中する。順位表はもう見ない。他のチームの結果によらず、1試合ずつ大事に戦っていく」
肉を斬られ、骨まで見えているチームをインザーギ監督は、それでも鼓舞し続ける。
なぜなら、彼らには一縷の望みがあるからだ。