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大詰めスクデット争い。ラツィオ&
アタランタの意地vs.サッリの“タマ”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/07/10 19:00
ロナウドら多士済々の面々を手懐けながら、ポゼッションを展開する。サッリ監督はユーベで栄光をつかむことができるか。
神懸かりアタランタが“援軍”に?
ラツィオは7月20日(月)の第34節に、首位ユベントスとの直接対決を残している。加えて今週末の第32節では、4位アタランタという強力無比な“援軍”が先行してトリノへ乗り込む。
今、アタランタの強さは神懸かっている。
CLベスト8進出を決めた中断前も強かったが、再開後の彼らは鬼神の強さだ。あらゆる相手を呑んでかかる今のアタランタは、食われる蛙ではなく“にらむ蛇”と化した。
中断前からレッチェ相手に7ゴールを叩き込んでいたが、6月21日、未消化だった第25節サッスオーロ戦の4発大勝を皮切りに、コッパ・イタリア決勝でユーベに競り勝ったナポリも2-0で退けた。苦戦した第30節カリアリ戦もこれまでになかった試合巧者ぶりを見せながら1-0で凌ぎ、破竹の5連勝だ。
ガスペリーニのもと、息切れはない。
圧巻だったのは、2位ラツィオと対戦した第27節の大一番だ。
指揮官ガスペリー二を出場停止処分で欠き、意気盛んだった相手に試合開始早々オウンゴールで失点。前半だけで2点のビハインドを背負ったが、怒涛の反撃で3-2の大逆転勝ち。劣勢に立たされても“自分たちは強い”という確信を漲らせながら勝点3をもぎ取った。
戦術家ガスペリーニは、リザーブ組にも先発組と同じレベルで可変式3バックから組み立てる連動攻撃を徹底的に仕込んでいる。チーム全体の戦術浸透度では、就任初年度でC・ロナウドという王様をどう気分良くプレーさせるか、今も腐心しているサッリ親分のユベントスのはるか上をいく。
選手たちの平均年齢が若いぶん、まだ本格的な息切れも起こしていない。
第30節終了時点でのリーグ戦の得点数は断トツの83得点(※2位はラツィオの66得点)、昨季打ち立てたクラブレコード「77」はすでに塗り替えた。
これほど強いプロビンチャーレは、1985年に優勝したベローナ以来ではないかと観る者の興奮を誘う。
8日時点で3位とはいえアタランタの優勝の目はかなり薄い。ただ、彼らにとっては奇跡的偉業ともいえる2年連続チャンピオンズリーグ出場権はほぼ手中にした。
それでも彼らは手綱を緩めることはしない。できない。