プロ野球亭日乗BACK NUMBER
中川皓太は山口鉄也の後を継げるか。
「代えのきかない選手」へ2つの課題。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/07/04 20:15
7月1日のDeNA戦に登板した中川。巨人のセ・リーグ連覇には、彼の獅子奮迅の活躍が必要だ。
昨季は夏場にバテてフォームがガタガタに。
実はスライダーピッチャーの山口が本格化した大きな要因も、左打者の膝下へのシュートを覚えたことがきっかけだった。
「バッターのスライダーへのイメージを大事にしながらまっすぐとツーシームをどう使うか。今年は配球とかで工夫をしていかないといけないので、ツーシームに磨きをかけたい」
本人もこう語っていたように、昨年は6.3%だったツーシームの配球率が、今年は11.4%まで上がって、外角の真っ直ぐとスライダーをより遠く見せる配球ができるようになってきている。
さらに言えばスライダーの球速も平均して4kmほどアップしたことで、外角真っ直ぐとの出し入れに幅が出ているところも見逃せない点だろう。
そして山口鉄也の後継者への、もう1つの課題と言えるのがスタミナ面で、これはこれからシーズンを通じて試されるテーマとなる。
昨年は8月までに45試合に登板すると、夏場にバテてフォームがガタガタになった。
「自分でどこが悪いのか分かっていても、それを修正できなかった」
本人がこう語るくらいに疲れから体がいうことをきかなくなって、8月は9試合に登板して防御率が6.75と急降下。結局9月も同3.48と前半戦のボールのキレを取り戻すことができないままに打たれるケースが目立ってしまっていたのだ。
馬車馬の如く投げ、馬車馬の如くチームに貢献する。
「もっている才能というのはかなりのハイレベル。ただそれをいつでも発揮できるような強い心と身体というのが彼に求められる1番のテーマかもしれませんね。その辺が中川がかつての山口のようなチームの屋台骨を支えるような投手なっていくための1番の課題かもしれません」
キャンプの時にこう語っていたのは原監督だ。今季は新型コロナウイルスの影響でシーズンは120試合に短縮。しかしその一方で圧縮された日程は雨天中止などがあればかなり過密なスケジュールになるケースも考えられる。
その中でどれだけコンディションを維持して投げ続けられるか。そこがむしろ中川にとっては乗り越えなければならない1番の壁になるのかもしれない。
馬車馬の如く投げ、馬車馬の如くチームに貢献する。
そういうリリーバーがいることが、近代野球では優勝への必要不可欠な条件であり、だからこそ山口は「余人をもって代え難い存在」と言われるようになり、中川に求められる役割もまさにそこにある。