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第二のモウリーニョになれるか?
スポルティング監督、アモリムの革命。
posted2020/07/06 18:00
text by
レミ・デンダニRemi Dendani
photograph by
Facebook/Sporting Clube de Braga
35歳にしてポルトガルの3大名門のひとつスポルティング・リスボンの監督に就任。これだけなら同様の話は他にもあるだろう。だが、プロの監督経験が2年に満たない、欧州の1部リーグではわずか10数試合しか戦っていない新人監督を、1000万ユーロの違約金を払ってまで獲得した、となると話が違ってくる。
2020年3月初めにルベン・アモリムは、35歳の若さながら世界サッカー史上3番目に高額で取り引きされた監督となった。
なぜ、そんなことが起こったのか。
今シーズンはじめは3部リーグの監督であったアモリムの驚愕のストーリーを、『フランス・フットボール』誌4月21日発売号でレミ・デンダニ記者がレポートしている。
監修:田村修一
史上3番目の高額違約金を払われた監督として。
たった7カ月でゼロから1000万ユーロへ。《監督の証券市場》においてルベン・アモリムは、予期せぬ成長株として一躍その存在を知られるようになった。
にわかに脚光を浴びたアモリムは、ポルトガルの3大名門クラブのひとつであるスポルティング・リスボンの監督に迎え入れられた。歴史と伝統を重ねたスポルティングだが、2002年以降国内タイトルに見放され、スポーツ面でもまた財政面でも、深刻な危機に瀕しているのだった。
立て直しのための様々な試み――多くの有能な若手の起用やロシアからの資本導入などが失敗に帰した後、クラブは最後の手段として今季はじめてリーガNOS(1部リーグ)の指揮を執る青年監督獲得のために、1000万ユーロの違約金を支払うことを決意した。
この額は、選手も含めてスポルティングのクラブ史上2番目の高額移籍であり、ブルーノ・フェルナンデスやラフィーニャといったクラッキたちを上回る額であった。
そして世界的に見ても、アンドレ・ビラスボアス(1500万ユーロで2011年にポルトからチェルシーに移籍)とブレンダン・ロジャース(1090万ユーロで2019年にセルティックからレスターに移籍)に次ぐ3番目の高額の違約金だった。まだ35歳の監督に対しては、破格であるといえる。
では、どうしてこれほど高くなったのか。
それは選手時代に2度(2010年と2014年)のワールドカップに出場したアモリムが、監督としてもそれだけの実績を短い間にあげたからで、それはジョゼ・モウリーニョやジョルジュ・ジェズス、ビラスボアスの若手時代と比べても、決して引けを取るものではなかったからである。