フランス・フットボール通信BACK NUMBER
第二のモウリーニョになれるか?
スポルティング監督、アモリムの革命。
text by
レミ・デンダニRemi Dendani
photograph byFacebook/Sporting Clube de Braga
posted2020/07/06 18:00
ブラガでは、各選手のトレーニングの内容まで非常に細かく指導していたというルベン・アモリム。そのかいあってか、チームは一気に上昇した。
ブラガの記録を次々と塗り替え、伝説を作った。
即座に仕事に取りかかったアモリムは、3-4-3システムでのプレーの構築――ゴールキーパーからボールを繋いで相手のプレッシャーの中でパスを回し、疲れさせてスペースを作り出すスタイルを作りあげた。
最大の武器は、高い位置からの守備であり、強固な戦術的ディシプリンである。
勝者のエスプリとも結びついたこのスタイルは、素晴らしい結果を生んだ。
ブラガはこの15年間、エスタディオ・ドラゴン(FCポルトのホームスタジアム)で勝利を収めたことがなかった。だが、アモリム率いる新生ブラガは、1月17日のリーグ戦で勝ち星(2対1)を挙げたのに続き、1週間後のリーグカップ決勝でも1対0とポルトに土をつけた。
またブラガは、エスタディオ・ダ・ルス(ベンフィカの本拠地)ではなんと65年間未勝利だった。その記録も、2月15日のリーグ戦で1対0の勝利を収めて終止符が打たれた。
さらに残る3強のひとつスポルティングにも2連勝(1月21日のリーグカップ準決勝で2対1、2月2日のリーグ戦で1対0)。
ビッグ3のスター選手たちが、《弱小》ブラガを相手に次々と見事なまでに封じ込まれていったのだった。
アモリムの就任以来7連勝を成し遂げたブラガは、ジョルジュ・ジェズスのもと2008~09年シーズンに達成したクラブの連勝記録(6連勝)を更新するとともに、リーグ順位も3位までジャンプアップした。ブラガがこれほどまでに注目を浴び、野心を抱けるようになったのはかつてないことだった。
“スペシャル・ワン”を逃した過去が……。
一方ビッグクラブの中では、ブラガに2連敗を喫したスポルティングが、クラブ運営のすべてを賭ける勢いで違約金の1000万ユーロをブラガに支払い、アモリムの監督招聘を決める。
それはスポルティングが2001年に犯した過ち――自由契約となったジョゼ・モウリーニョとの間に合意を得ながら契約に至らず、後の《スペシャル・ワン》をウニオン・レイリアに逃してしまった過ちを繰り返さないための決断だった。人材の発掘では定評のあるフレデリコ・バランダス会長もそれを認めている。
「もしも彼がシーズン終了までに他のクラブと契約してしまったら打撃は計り知れない。このまま(シーズン終了を)待つのはリスクが大きすぎた」
モウリーニョとアモリムのケースはまったく同じではないが、指導者としての才能を早くから注目された点では共通している。
もちろん監督経験が2年にも満たないアモリムが、モウリーニョと同様の経歴を辿れるかどうかはいまだ定かではないが……。