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第二のモウリーニョになれるか?
スポルティング監督、アモリムの革命。
text by
レミ・デンダニRemi Dendani
photograph byFacebook/Sporting Clube de Braga
posted2020/07/06 18:00
ブラガでは、各選手のトレーニングの内容まで非常に細かく指導していたというルベン・アモリム。そのかいあってか、チームは一気に上昇した。
結果以上に評価された独自の「ビジョン」。
2019年の夏に、彼は必要なライセンスは取得していたにもかかわらず、ベンフィカのU-23チーム監督のオファーを断った。より制約の少ない環境で仕事がしたいというのがその理由だった。
彼が望んだのは、自らのプレーのビジョンをチーム全体に浸透させるために、クラブのすべてを掌握できる環境だった。
エストリルU-23チームの指揮をごく僅かの間執った後、彼はかつて1シーズン(2012~13年)を過ごしたスポルティング・ブラガB(3部リーグ)の監督に就任した。そして直ちに成功を収めるが、それは成績だけに留まらなかった。
11試合で8勝という結果以上に、称賛されたのはそのビジョンでありプレースタイルだった。
自律性と能動性に溢れた攻撃的な3-4-3システムは、プレッシングとボールポゼッションとを見事に調和させた、ポルトガルでは類を見ないものだった。魅惑的なプレーの数々は、見るものの心をたちまちのうちに魅了した。
そのなかのひとりが、2003年からブラガの会長を務めるアントニオ・サルバドールだった。
「目的はひとつのアイデンティティを確立すること」
彼は2018-19年シーズン途中、ブラガの監督をしていたリカルド・サ・ピントに代えるべく、アモリムにトップチームの監督就任のオファーを出した。すぐさまこの願いは実現し、暮れも押し詰まった12月27日に新監督が誕生した。
このときブラガはリーグ8位。会長もサポーターもまったく納得のいく順位ではなかった。
着任早々、アモリムはこう宣言した。
「私の目的は、ひとつのアイデンティティを確立することで達成される。チームはいまだかつて得たことのない何か――純粋な力をこれから得るだろう。私は偉大な監督や指導者たちのもとでプレーしてきた。そこで得た自らのプレーの理念をチームに伝えて、確固としたアイデンティティを築きたい」
その言葉は、ハッタリではなかった。