マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
西武の平良海馬は石垣島の希望だ。
「ああ見えて精神年齢高いんです」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/06/30 08:00
高校時代に指導した末吉監督は何度も「ああ見えて」平良海馬のポテンシャルを絶賛した。沖縄野球のイメージを変える存在になるかもしれない。
平良海馬が「脱皮した」瞬間。
「最初は、ただ力任せにガンガン投げるだけの“野生児”で、完投して四球14なんてこともありました。でもだんだん、海馬がピッチングとかピッチャーってこととまっすぐ向き合うようになってきたんですよね」
バックに足を引っ張られるとムキになったり投げやりになるのを、叱ったり、なだめたり、諭したり……。そんなことが続いていたある試合で、いつものように、打ち取った打球をエラーされた平良海馬がベンチに戻ってきて、
「おい、エラーなんて気にしないで攻めていこうぜ!」
チームメイトを鼓舞する発言をしたから、末吉監督、驚いた。
「海馬が変身した……いや、脱皮した瞬間でしたね。そこからピッチャーとして、劇的に変わりました。“緩”あっての”急”だってこともわかってきて、ああ見えていろんな変化球投げられる。教えたことを決してハイ、ハイで済まさないで、ボールの握りや肩甲骨の動き、体重移動……疑問があれば聞き返してきて、ビデオを見ながら納得ずくで身につけていって」
意外と大人っぽい自己決定力。
2年生の秋には、147キロまでMAXを伸ばした。
「腹筋なんか10秒も静止できないのに、140キロ台を投げる。これで、体幹が人並みになったら何キロ出るんだろう、伸びしろすごいだろうなぁと思ってたら、自分からジムに通うようになって、ひと冬越えて3年の春には152キロ。こりゃあ、プロに出してあげなきゃと思いました」
上のレベルに行って、投げる以外の仕事で苦労しないように、牽制、クイック、フィールディング、毎日のように末吉監督の指導が続いた。
「体の柔軟性とか指先感覚とか、ああ見えてパワー以外の要素も備えてましたし、教わったことをしっかり試すことができて、合わないと思ったら捨てることもできる。そういうところ、意外と大人っぽくて」