マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
西武の平良海馬は石垣島の希望だ。
「ああ見えて精神年齢高いんです」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/06/30 08:00
高校時代に指導した末吉監督は何度も「ああ見えて」平良海馬のポテンシャルを絶賛した。沖縄野球のイメージを変える存在になるかもしれない。
内川聖一を詰まらせた!
末吉先生、「西武・平良」について、忘れられない場面があると言う。
「去年ですよ、ソフトバンク戦で、バッターがあの内川選手ですよ」
平良海馬の内角速球に、内川がどん詰まりのセカンドゴロだったという。
「プロ野球を代表するバッターですよ。あれだけのバッターが、あんなに詰まる姿なんか見たことない。見ていて、僕がいちばん痛快でしたね!」
大方の予想を良い方向に裏切って、プロ2年目の昨季後半から一軍の中継ぎの1人として26試合に登板した西武・平良海馬。
プロ初勝利どころか2勝目まで挙げて、ホールドも6。
デビュー後まもなく危険球退場という「試練」に遭いながら、2日後にはきっちり1イニングを無失点に抑えてしまう「生命力」まで発揮した。正念場の今シーズンも、ここまで(6月28日現在)中継ぎに4回登板して、まだ1点も奪われていない。
「もともと、緊張してちぢこまるとかビビるとか、そういうこととは縁のないヤツですから。見とけ、オレがやったる……打てるもんなら打ってみろ! みたいな投げっぷりが見込まれて、指名につながったと聞いています」
優勝は飾ったが、チーム防御率は12球団中11位だった昨季の西武ライオンズ。
中継ぎに平良が加わって「7回」が固まってから、西武の投手陣が落ち着いた。そんな表現をする人もいる。
成人式より、自主トレを選んだ。
「こっち(石垣島)では、1月の成人式にはみんな島に帰ってきて成人を祝うものなんですが、海馬だけは帰って来なかった。去年、菊池雄星投手にくっついてアメリカに自主トレに行ったんですが、その時に初めてで遠慮もあって、聞きたいことも聞けなかったらしいんです。
それで今年、もう一度連れてってもらって、納得がいくまで勉強したいって。まだハタチの若者ですから、みんなと会ってワイワイやりたかったはずなのに、そういう欲望とか誘惑にあいつは負けない。今の自分に必要なのは、メジャーリーガーの先輩との自主トレなのか、島の成人式なのか……ちゃんと優先順位をつけられる。ああ見えて平良って、精神年齢、結構高いんです」