プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
“呪われたIWGP”が持つロマン。
プロレス界の栄枯盛衰を映す鏡。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/06/29 11:00
決着をつけるべく、IWGP優勝戦での二度目の決戦となった猪木vs.ホーガン戦だったが、またもやうやむやに。
翌年、ホーガンとの決着をつけるべく……。
6月14日の蔵前国技館に話を戻そう。超満員の観客に加えて、国技館の外の敷地では入れないファンのために映像が流されていた。
猪木がバックドロップを放てば、ホーガンも猪木を高々と持ち上げた。ホーガンがフレッド・ブラッシーのような切れのいいネックブリーカーを見せれば、立ち上がり際、猪木は延髄斬りを決めた。だが、ロープ際で放った2発目の延髄斬りは空を切ってしまった。
場外でのブレーンバスターが猪木を襲った。ホーガンが先に上がったが、裁定は両者リングアウトだった。
ホーガンはこのジャッジに納得せず、しかも試合続行を嫌ったが、試合は無理やり延長戦に突入することにされる。
不可解に次ぐ不可解……決着はうやむやに。
猪木が足4の字固めに入った所で、ホーガンは強引にロープを超えてエプロンに出てしまう。締め上げる猪木とギブアップしないホーガン。ここでまたしても両者カウントアウトになってしまう。
再延長戦。
ロープを背負った猪木にショートレンジのアックスボンバー。猪木は大の字。また、猪木の舌が出ている。猪木はまだ動けたし、意識もあるのになぜ……ホーガンのアックスボンバーと猪木の舌にはどんな関係があるのだろう。
さらにホーガンはスピードをつけてアックスボンバー。猪木は本能的に右足をロープに伸ばしてフォールから免れた。
ホーガンは猪木を担ぎ上げるが、もつれるように場外へ落ちた。
場外でもホーガンのアックスボンバーを浴びた猪木は後頭部を鉄柱とロープをつなぐ金具に打ち付けてしまう。前年の悪夢の再現フィルムのような過程だった。エプロンに上がって来る猪木をアックスボンバーが待ち受けた。さっきまでカウントを取っていたレフェリーが邪魔になったことが幸いして、猪木はかがんでアックスボンバーをかわし、2人とも場外に落ちていった。
ホーガンが猪木を鉄柱にぶつけようとすると……そこにいた長州力が猪木にラリアットをぶち込んだ。さらに、長州はホーガンにもラリアットをぶち込んだ。ホーガンも腕を出して相打ちのようにはなったが、ホーガンにダメージがあった。
長州の暴挙だった。
この暴挙から、会場はとんでもない暴動へと発展する。