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「ふざけるな!このボケッ」前田日明がブチギレ“伝説の控え室ボコボコ事件”…“被害者”坂田亘に負けた男が証言「じつはあの試合で大ケガしていた」
posted2024/04/21 11:03
text by
細田昌志Masashi Hosoda
photograph by
AFLO
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「お前すげえな」オランダで有名になった日本人
1995年2月、鶴巻伸洋は2カ月半のオランダ修行に向かった。主に立ち技を学ぶためで、修行先はオランダキック界中量級の強豪ライアン・シムソンの所属するヴァゾーストジムである。日本でもキックボクシングジムに出稽古に行くなど、打撃技の習得に余念がなかったが、何せスパーリングの相手になるヘビー級選手が滅多にいなかった。そこで、ピーター・アーツやアーネスト・ホーストなどK‐1に数多くのヘビー級の強豪を輩出しているオランダを修行先に選んだのだ。
「今までリングスに参戦してきて、寝技ではいい勝負が出来ていたのに、打撃で逆転されるケースが多かった。それで、オランダに行ってヘビー級の選手とガツンガツンのスパーリングをやろうと思ったんです」
しかし、日本からのプロ修行者の存在は、アムステルダムに住む格闘家の間で瞬く間に知れ渡った。ある日“オランダ格闘技界の総帥”クリス・ドールマンに練習に誘われたという。
「『アムスにいるのに顔を見せないのはどういうことだ? 折角だから一緒に練習しようぜ』って言うんですよ。それで、当初は週5日キックの練習に費やしていたけど、寝技の練習もやることにしました。月曜と金曜が寝技。火曜と木曜がキック。水曜がサンボ。柔道着を持って行っていたので道着を着てのスパーリングも繰り返しましたね」
「バス・ルッテンとも寝技のスパーリングをやったんだけど、アキレス腱固めで一本取ったんです。ドールマンにもアキレスで取りました。後はヘルマン・レンティングともやりましたね。足関節はオランダの選手には割と有効だったと思います。ただ、ドールマンは強かった。一言で言うとフィジカルの強さ、あの人は岩ですよ、岩(笑)」
鶴巻がアムステルダムで、ドールマンやルッテンから一本取ったという情報は、インターネットが一般的ではないこの時代でも、東京の格闘家の間に伝わっていた。
「これは帰国してからの話ですけど、この頃、藤原組に所属していた臼田勝美さんと話してたら『お前すげえな、ドールマンから一本取ったんだって?』って言うんですよ。『その情報、どこで知ったんですか?』って尋ねたら『みんな知ってるよ』って言うんです。だから、割と広まっていたのかもしれません」
「もう1回やれ!」前田日明が命じた
オランダから帰国して間もなく、鶴巻伸洋の次戦が決まった。相手は前年11月以来の坂田亘。