セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
冨安健洋がロナウドを前に魅せた。
地元紙も称えたタフネスと技術。
posted2020/06/24 18:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
あのクリスティアーノ・ロナウドであっても、抑えるべき相手の1人にすぎない。
ボローニャのDF冨安健洋は決意のこもった声で「はい」とはっきり肯定した。ロックダウン前、来るユベントス戦への抱負を尋ねたときのことだ。
6月22日、セリエA再開後の初戦でボローニャは本拠地「ダッラーラ」にユベントスを迎え撃ち、0-2で敗れた。
ただし、冨安もボローニャも甘んじて敗北を受け入れたわけではない。5位(6位はELプレーオフ)に与えられる来季のEL出場権獲得のため、彼らは残る11試合に懸けている。
誰も経験したことのない“カルチョの夏”が始まった。
ボローニャと冨安は、王者ユベントスに真っ向勝負を挑んだ。
指定席である右サイドバックで先発した冨安の最重要タスクは、対面するロナウドをケアすることだった。
タッチライン際の攻防に思い出す内田。
リーグ戦の再開に先立って行われたコッパ・イタリア準決勝と決勝の2試合で無得点に終わり、ナポリにタイトルを譲ったユーベは、厳しい批判に晒されていた。彼らは外野を黙らせるため、ボローニャ戦では何としてでもエースFWの得点で勝つ必要があった。
試合序盤から必然的にボールの集まるロナウドに対し、冨安はどう対応したのか。
“トミ”のプレーには集中力が漲っていた。
ユーベの7番がペナルティーエリアへと侵入してきた8分、パスの出どころを注意深く見極めていた冨安はすかさず距離を詰めて、シュートを阻止した。相手SBからクロスを放たれても、ロナウドへのコースを潰すことでシュート体勢をとらせない。
20分にはボールを持ったロナウドと1対1で睨み合った。
居合の達人のように、両腕の力を抜いて垂らす地上最強のストライカー。2mの距離で腰を落とし、牽制する冨安。高速フェイントを2度、3度と入れて左右へ揺さぶるロナウドに、冨安は食らいついた。
タッチライン際の攻防を見ながら、僕はシャルケ時代の内田篤人が、当時R・マドリーの王様だったロナウドとCLでマッチアップした名場面を思い出していた。