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冨安健洋がロナウドを前に魅せた。
地元紙も称えたタフネスと技術。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2020/06/24 18:00

冨安健洋がロナウドを前に魅せた。地元紙も称えたタフネスと技術。<Number Web> photograph by Getty Images

あのクリスティアーノ・ロナウドを前にしても、怯まず食らいついた冨安健洋。技術とタフネスを世界に見せつけた。

最後までモンスターに屈しなかった。

“シックスパックのマッスル・モンスター”クリスティアーノ・ロナウドとマッチアップするDFは、まずスピードで振り切られ、ジャンプで競り負け、ぶつかり合いで弾き飛ばされ、フィジカルの圧倒的な差に打ちのめされる。時計の針が進み、疲れもたまった頃、なおも突進する化物ストライカーのゴールへの執念に心が折られる。

 確かにボローニャはPKによる得点は許したし、結果としてゲームには負けた。

 しかし、冨安は最後まで心も体もロナウドに屈しなかった。

 63分、攻守が入れ替わって右サイドを駆け上がった冨安は、背後から追走してきたロナウドに倒されながらCKを得ることに成功した。

 ゲームを流すことを良しとしないロナウドは、2点リードで残り5分を切っても、仲間たちへ「上がれ! 上がれ!」と檄を飛ばした。対する冨安は臆することなくタッチライン際の空中戦で、ハイボールをロナウドと競り合った。

 後半アディショナルタイムには2度のFKに合わせ、ユーベのゴールに迫った。98分にロッキ主審がタイムアップの笛を吹く直前まで、冨安は中盤でボール奪取に勤しんでいた。王者との大一番で、チーム1のタフネスと確かな技術を見せつけたのは冨安だった。

トミヤスって野郎、やるじゃねえか。

 試合翌日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、チーム最高評価に「CR7相手によく持ちこたえた。常に警戒を怠らず、高低のボールによく気を配った」という寸評を添えて、冨安の健闘を労った。

 ロナウドはセリエAでプレーするあらゆる選手にとってハイレベルすぎる基準点だ。ボローニャ戦を目撃した同業のDFやFWたちは“トミヤスって野郎、やるじゃねえか”と、これまで以上に一目置いたに違いない。

 再開幕前、闘将ミハイロビッチは中断期間中の選手たちのインタビュー記事すべてに目を通したという。彼はそこに好ましい共通点を見つけた。

 チームの目標が「セリエA残留」と言う者が1人としていなかったのだ。ボローニャの選手たちは皆が皆、一段上の高みを見ている。6月19日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙インタビューに応じた冨安も、「自分たちの目標はEL出場」と断言している。

 今後7月に佳境を迎える真夏のリーグ戦は選手や監督はもちろん、フロントから裏方に至るまで全員にとって初経験だ。優勝争いもCL、EL出場権も残留争いも、どう転ぶのか誰にもわからない。

 真夏の白昼夢のようなカンピオナートの再開。ひとつだけ言える確かなこと、それはロナウドと渡り合った冨安の残り試合から目が離せないということだろう。

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