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クロップ「攻撃が物足りなかった」
リバプールと南野拓実に勘は戻るか。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byGetty Images

posted2020/06/22 19:30

クロップ「攻撃が物足りなかった」リバプールと南野拓実に勘は戻るか。<Number Web> photograph by Getty Images

南野拓実は素早い守備の切り替えを見せつつ、シュートチャンスの場面も作った。優勝目前の中、チームとともに試合勘を取り戻せるか。

サラーとロバートソンを欠いて。

 3カ月に及んだ公式戦のない日々は、大方の負傷者を回復させ、選手たちをリフレッシュさせた。「たとえファンがいなくても、ダービーは選手たちの力を引き出してくれるはずだ。なにしろ、これはダービーだからね!」とキックオフ直前にユルゲン・クロップ監督が陽気なトーンで話していたとおり、観客はいなくても(擬似的な歓声や効果音を導入する工夫はあった)、久しぶりにピッチに戻ってきた選手たちはしっかりと集中してプレーしていたと思う。

 ただし──。試合勘だけは実戦でしか養えない。あらためて、そう感じた90分でもあった。

 リバプールはモハメド・サラー、アンドリュー・ロバートソンとふたりの主軸を欠きながらも、国内リーグで首位を独走する欧州王者らしく、主導権を握って試合を進めた。

南野のプレーは悪くない出来だが。

 前者の代役に抜擢され、プレミアリーグ初先発を飾った南野拓実は10分、ボックスの外でボールを受けると、挨拶がわりのミドルを枠外に放った。

 この25歳の日本代表は右のウイングに配されながらも、サイドに張ることはほぼなく、中央寄りの位置から動きをつけてジョーダン・ヘンダーソンやトレント・アレクサンダー・アーノルドらと連携し、打開を図っていった。また34分には、右サイドで一度は失ったボールを相手の足元でつつき返し、すかさず逆襲につなげている(ロベルト・フィルミーノのシュートは枠外へ)。

 南野は前半の終盤にも周囲とのコンビネーションから、最後は自らゴールを狙ったものの、相手DFにブロックされ、ハーフタイムにはアレックス・オクスレイド・チェンバレンと交代した。

 南野のプレーは悪くない出来だったが、世界王者の一員としてピッチに立ち続けるには、それだけでは十分ではない。特別な武器を備え、それを発揮していく必要がある。彼に代わったオクスレイド・チェンバレンには、圧倒的な推進力とパワフルな一撃があり、拮抗した状態を打開するにはうってつけのカードと言えた。

 しかし選手が代わっても、ピッチ上の展開に大きな変化はなかった。リバプールは、中断期間にアンチェロッティ監督の手法を確かに咀嚼したエバートンの組織的な守備を攻略できず、終盤には逆に相手のカウンターを受けてしまった。トム・デイビスのシュートがポストに阻まれていなければ、エバートンが1-0の勝利を収めていたはずだ。

【次ページ】 クロップが口にした「物足りなさ」。

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