ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムの語るいま、そして秘めた炎。
「私はフリーだ。君もわかるだろう」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAFLO
posted2020/06/12 11:30
オーストリア代表監督となったかつての教え子とオシム。オシムは今でも彼らを見守り続けている。
ジェフにとって最高の時代だった。
――しかしジェフは、あなたが去った後は悪い状況から脱することができず、今もJ2で苦しんでいます。
「どうしてだ。何が悪いのか? 監督は誰なのか?」
――今シーズンの初めから韓国人の監督(尹晶煥)が見ています。
「崔龍洙の代わりに別の韓国人が来ているわけか。自分たちよりも優れている人物であれば、頼るに値する。監督をどうするか、準備をどうやっていくかといった問題であり、ディシプリンの問題だ」
――ただ、あなたの時代がジェフにとって最高の時代だったのは誰の目にも明らかです。
「もし金だけが目当てだったら誰もジェフには来ない。金持ちクラブではないし、取り巻く環境も決していいとは言えない。それほど優れた選手がいるわけでもない。だから選手やスタッフの野心を高めていく以外にない。強い意志を喚起して、働く環境を整えていく。そのうえで集中的に仕事ができれば、それだけですでに素晴らしいことだ。
またジェフには優れたジャーナリストがいて、常にチームを追いかけていた。それはまるでレアル・マドリーのようで、試合だけでなく練習もすべて見に来ていた」
期待の監督はかつての私の選手。
「日本は本当によくやっている。出来ることをすべてやっている。素晴らしいスタジアムを次々に建て、インフラもしっかりと整備した。今では日本は、どこに行っても素晴らしいスタジアムで素晴らしい試合を見ることができる。ピッチも素晴らしい。選手にとってはとても大事なことで、スペクタクルなプレーを実現できる。そうしたものに触れられる人生が君たちにはある。いい試合があればそれを見ることができる。
皆さんにくれぐれもよろしく伝えてくれ。君もそうだ。健康には十分に気を使って。次に君が来たときにはぜひレストランに行こう。そしていい試合を幾つか一緒に見よう。
オーストリアもリーグのレベルが上がっている。ワールドカップ予選突破の可能性も高い。スタジアムにも多くのサポーターが駆けつけている。チームは若返った。監督を務めるのはかつての私の選手だ」
――フランコ・フォーダですね。
「彼はチームを100%若返らせた。以前の選手たちはもう誰もいない。20歳過ぎの若い選手たちが完全に主力になった。サッカーにとって悪いことではない。サッカーはより速く、より素晴らしくなっている。観客の数も増えている」