ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムの語るいま、そして秘めた炎。
「私はフリーだ。君もわかるだろう」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAFLO
posted2020/06/12 11:30
オーストリア代表監督となったかつての教え子とオシム。オシムは今でも彼らを見守り続けている。
「私はフリーだ。君もわかるだろう」
――活動を停止しています。ワールドカップ予選も再開はしていません。
「こちらの問題もやはりコロナだ。ほとんどの国で試合が中断していてリーグ再開の目途が立っていない(5月末インタビュー時)。だが、ドイツは再開した。ドイツが始めれば、ヨーロッパでは多くの国が後を追うだろうから、全体の再開もそう遠くはないだろう。ドイツやイングランド、イタリアの動向には全ヨーロッパの注意が向けられている。彼らの判断が基準になっていく。ドイツが再開して大丈夫と判断したならば、それに従う国がどんどん出てくるだろう」
――悪いことではありません。
「その通り。イタリアやスペインがこれからどうするのか。彼らの動向を見た後に全体の流れが決まる。ようやく再開の兆しが現れた。EURO2020のプレーオフは、3月の試合がコロナによって延期になったままだ。できるだけ早く再開して欲しいと願っている。
もし日本にレアル・マドリーのような優れたチームがあって監督を探していたら、私はフリーだ(笑)。君もわかるだろう」
――推薦します(笑)。
日本の優れた選手が活躍している。
「金は山分けしよう(笑)。仕事には事欠かないはずだが私には欠けている。働かないでいる時間が長すぎるのはあまりいい状態とは言えない。それで今はニュージーランドやベリーズ、香港、マカオといった小さな国々を調べている。まあ冗談だが、レアルよりもいい。
興味はあるのに、そうした国からオファーがないのが残念だ。それらの国も多くを学んでいるのは間違いない。イタリア人やポルトガル人の監督たちがいい仕事をしているからだ。リーグもそれなりのレベルで、技術や戦術、フィジカルも悪くはない。新しいものを発見できるだろう。それは可能性に満ちた若い世代であったりする。
今はそうした小さな国々の選手も少しずつヨーロッパに来るようになった。日本人がそうであるように。今、日本人はヨーロッパのどこにでもいる。南野(拓実)をはじめ、優れた選手たちがそれぞれのクラブで活躍している」