サムライブルーの原材料BACK NUMBER
サンガ→本田圭佑のホルン→関東1部。
J復帰目指す“介護フットボーラー”。
posted2020/06/02 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
VONDS ICHIHARA
特別養護老人ホームで働きながら、Jリーガー復帰を目指す男がいる。
沼大希、23歳。
関東サッカーリーグ1部VONDS市原に所属するフォワード。中盤、前線いくつものポジションをこなせる器用なタイプだ。
昨年、本田圭佑の事務所が経営に参画していたオーストリア2部のSVホルン(経営参画は2018-19年シーズン限りで撤退)で半年間プレーし、10試合5ゴールという結果を残しながらも契約延長に至らなかった。
帰国後は登録期間の問題もあって所属先が決まらず、半年間の浪人生活を経てオファーが届いたVONDSに今シーズン、加入したという経緯だ。
VONDSはJリーグ百年構想クラブとして承認され、近い将来のJリーグ参入を目指す。川崎フロンターレや柏レイソル、ベガルタ仙台などで活躍し、試合後にサポーターと一体となって盛り上がる「岡山劇場」で知られる岡山一成が今季から監督に就任した。
特養は介護レベルの高い人が入所する。
沼は元々、京都サンガのアカデミー出身。ここまで「プロ」としてやってきたものの、カテゴリーを地域リーグまで落とすとなるとサッカーだけでメシを食ってはいけない。
クラブのトップスポンサーを務める医療法人社団「緑祐会」と同系列のグループが経営する「グリーンホーム」で介護の仕事をしながら、7月に予定される開幕に向けて準備を続けている。
「クラブから特養での仕事を紹介してもらいましたけど、介護の経験もないので事務仕事だなと思っていたんです。そうしたら、介護の仕事だと言われて驚きました。2月から働き始めて最初の1週間は、精神的にもかなりきつかったですね」
特養は介護レベルの高い人が入所するため、認知症を患っている方や体の不自由な方が多い。「会話が通じないこと」「おむつ交換に抵抗があること」など業務におけるストレスは溜まっていく一方だった。