サムライブルーの原材料BACK NUMBER
サンガ→本田圭佑のホルン→関東1部。
J復帰目指す“介護フットボーラー”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byVONDS ICHIHARA
posted2020/06/02 11:30
関東サッカーリーグ1部VONDS市原に所属し、介護の仕事もこなす沼大希。Jリーガー復帰を目指し、プレーする。
「ひと皮、ふた皮もむけるんじゃないか」
週5日から週4日の業務に変えてもらったことも大きかった。チームのオフ日を仕事のオフ日と合わせることができ、気持ちをリフレッシュする時間をつくれた。うまく両立でき始めると、日々の充実を感じ取ることができるようになる。
サッカーをやれる喜びが、仕事への前向きな姿勢につながる。
仕事を頑張ろうとする意欲が、サッカーへの真摯な姿勢につながる。
あるとき、京都のアカデミーの先輩で、親交のあるJ3福島ユナイテッドの田村亮介がこう言葉をかけてくれたという。
「介護の仕事に対する世間のイメージは大変っていうのがある。それを経験できるのは素晴らしいこと。介護の仕事をこなしながらサッカーで結果を出していければ、人間としてひと皮、ふた皮もむけるんじゃないか」
心にガツンと響いた。ひと皮もふた皮もむくことができる大きなチャンスだと思えた。
沼は期待のホープだった。
沼は期待のホープだった。
アカデミーから昇格1年目、初出場初ゴールが決勝点となって注目を集めたものの、6試合1得に終わった。2年目はJ3ガイナーレ鳥取に武者修行に出て30試合4得点。そして翌年、京都に戻って爆発を誓ったものの、5試合の出場にとどまった。
伸び悩んだ理由は「充実度」にあったのかもしれない。
「午前の練習が終わったら、次の日まで時間があるじゃないですか。その後は一日中ダラダラとしていました。なんなら後悔しています。今は昼に仕事があるので、充実を感じることができています」
入所者との距離感もつかめるようになった。自分なりにこの仕事のやり甲斐を感じるようにもなった。
新型コロナウイルスの感染拡大によって関東サッカーリーグ開幕の延期が決まり、チームの全体練習も中止となった。一方で介護の仕事はやらなければならない。施設の介護スタッフも少人数で回すことになったが、手が足りなくなって急きょ仕事に入ることもあった。