サムライブルーの原材料BACK NUMBER
サンガ→本田圭佑のホルン→関東1部。
J復帰目指す“介護フットボーラー”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byVONDS ICHIHARA
posted2020/06/02 11:30
関東サッカーリーグ1部VONDS市原に所属し、介護の仕事もこなす沼大希。Jリーガー復帰を目指し、プレーする。
「サッカーがなかった分、熱量を仕事のほうに」
ボールを蹴れず、仕事だけならまたストレスも出てくるのでは?
そう尋ねると、彼は首を横に振った。
「サッカーをできないつらさはなかったですよ。仕事があるんでダラダラすることもない(笑)。逆にサッカーがなかった分、熱量を仕事のほうにより向けられたところもあります」
千葉県も緊急事態宣言が解除され、少人数のグループに分かれての練習も始まった。これまでも自宅でのトレーニングやランニングなど、できることはやってきたつもり。日々の充実を保ち、7月の開幕を視野に入れてコンディションを高めていくつもりだ。
ホルンではサッカー選手として「ひと皮」むける段階にまできていた。球際で随分と強くなり、カウンター志向のチームのなかで裏に抜け出して得点するパターンが確立された。
「日本ではチャンスをもらったときに、爪痕を残せなかった。その教訓があったので、ホルンで初めてチャンスをもらったときに、自分で凄いプレッシャーを掛けた。ここで結果を出せなかったら次はない、と。その試合で2点取ることができたら、周囲の評価や対応も変わっていったんです」
当初は契約延長の方向をクラブから伝えられていたが、首脳陣の交代もあって強化の方針が変わって非更新となった。
ただ己の手応えとしてはサッカーの「充実期」に入ったと自覚している。カテゴリーを落としての日本での再挑戦となったが、「逆にハングリーな気持ちを高められている」と話す。
「サッカーだけでメシを食っていけるように」
沼は決意をあらたにする。
「やっぱり自分の仕事はサッカー選手。サッカーだけでメシを食っていけるようにならなきゃいけない。
このチームと一緒にJリーグまで上がっていくことも魅力だろうし、ここでの活躍を評価してくれるJリーグのクラブに行くことも魅力。そのためには、まずここでしっかり結果を残さなきゃいけないと思っています」
サッカーと介護の両立は、人間的な成長を呼び込むため己に課せられた使命。
ひと皮もふた皮もむけて、プロサッカー選手として輝くために。
彼はきょうもグリーンホームに足を運ぶ。「さあ頑張ろう」という熱量を持って――。