フランス・フットボール通信BACK NUMBER
妻はキリスト教で夫はイスラム教。
コートジボワール代表監督夫婦の情熱。
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph byPhotos Facebook Federation ivoirienne de football
posted2020/06/02 19:00
トゥーレ(写真左端)はキリスト教で、夫のスアリオはイスラム教を信じる。夫婦はコートジボワールの国家イメージも体現しているのである。
イスラム教の夫とキリスト教の妻の家庭。
「基本的に、ふたりとも学校で体育の教師をしている身なのです」とトゥーレは言う。
彼女がスポーツ省に所属しているのに対し、夫は文部省の指導のもと体育教育に関わっている。
トゥーレが続ける。
「知り合ったのは今から20年前で、まだどちらも現役の選手だった。コーチングライセンスを一緒に取得したのがきっかけで付き合うようになったのです」
指導者となったふたりは2006年12月20日結婚し、男子と女子と2人子供をもうけた。
それは恐らく世界のどこにも例のない家族の肖像であり、コートジボワールという国と社会を世界に向けて発信する、ひとつの新しいイメージでもあった。
また同時にそれが人間の寛容さを示すひとつの在り方であるといえたのは、イスラム教徒の夫とキリスト教徒の妻が、ひとつの家庭を築きあげたからでもあった。
うまく家庭内の役割分担を決めている。
彼らにとっての懸案は、お互いに限られた時間をどう調整するかだった。
夫が生徒に体育を教えている間、妻はテレビ番組にサッカー界を代表する存在として出演する。夫が自宅のあるアビジャンに戻れば、今度は妻が別の街に出かけている……。
すれ違いは日常茶飯事である。
「それでも何とかうまくやりくりはできる」とトゥーレは語る。
「いつも一緒にいられるわけではないけど、一緒に外出もできるし楽しい時間も過ごせる。普段は会えないから、旅先から家に戻って顔を合わせる瞬間が本当に嬉しい」
家庭内の役割分担もハッキリしている。
夫が息子の学業を手助けし、妻が娘の面倒を見る。ふたりをよく知るルスポーツ紙のドゥ・ニケズ記者は次のように語っている。
「ふたりはスイス人のワルテル・アマンから同じ教育を受けた。そのうえふたりともINJS(国立青少年スポーツ学院=コートジボワールの指導者養成機関)に通った。ハイダラは性格的に謙虚であるのに対し、クレメンティンはよりナチュラルだ。ふたりがお互いを補完しながら助け合っているのは間違いない」