フランス・フットボール通信BACK NUMBER
妻はキリスト教で夫はイスラム教。
コートジボワール代表監督夫婦の情熱。
posted2020/06/02 19:00
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph by
Photos Facebook Federation ivoirienne de football
クレメンティン・トゥーレという女性をご存じだろうか。コートジボワール女子代表監督を務め、夫で同国五輪代表監督でもあるハイダラ・スアリオとともに、アフリカではおしどり夫婦、おしどり監督として有名である。
経歴をざっとたどれば、プロ選手だった父親の影響で幼いころからサッカーに親しみ、自身もプロへの道を選択する。女子代表選手として22試合に出場した後に現役を引退、指導者を目指すがそこから先は簡単ではなかった。体育・スポーツのディプロマ獲得のための研修では、「男性のための講座だから」という理由で参加を拒否された。ところが彼女はそこで諦めず、研修初日にインストラクターに直談判して参加が認めさせてしまう。その後は……ディプロマを取得したばかりか後にはCAF(アフリカサッカー連盟)のA級ライセンスまで獲得し、指導者として第二の人生を歩み始めたのだった。
最初に指揮を執ったクラブはアビジャンの「アマゾネス・ドゥ・クマシ」。タイトルも獲得して2006年にはコートジボワール女子代表監督候補に名前を挙げられるが、メディアと世論の猛反対を受けて実現には至らなかった。まだ若く(当時29歳)経験不足というのが理由であったが、トゥーレ自身は「女性だから」というのが本当の理由であったと語っている。
実力を証明して人々を見返したい。その思いに燃える彼女は、赤道ギニアに転進し、まず同国屈指の強豪クラブである「アギラス・バルデス」、ついで女子代表監督に就任して2008年には赤道ギニア代表チームをアフリカ選手権優勝に導いた。その大会で予選落ちしていたコートジボワールは、今度は三顧の礼をもって彼女を代表監督に迎え入れた。そして2014年のアフリカ選手権では3位に入賞して、コートジボワール史上初となるワールドカップ出場を果たしたのだった。
『フランス・フットボール』誌3月10日発売号でフランク・シモン記者が描いているのは、そんなトゥーレと夫であるスアリオの今日である。
監修:田村修一
世界のサッカーシーンを引っ張る女性監督。
私生活においては結婚しているふたり――クレメンティン・トゥーレとハイダラ・スアリオは、ともにコートジボワール代表監督を務めている。
妻は女子代表監督、夫は五輪代表監督。一緒に暮らしながらも、しばしば離れ離れにならざるを得ないふたりは、仕事への情熱と家族への愛という強い絆で結ばれている。
妻は世界のサッカーシーンと最も深くかかわっている女性のひとりである。