フランス・フットボール通信BACK NUMBER
妻はキリスト教で夫はイスラム教。
コートジボワール代表監督夫婦の情熱。
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph byPhotos Facebook Federation ivoirienne de football
posted2020/06/02 19:00
トゥーレ(写真左端)はキリスト教で、夫のスアリオはイスラム教を信じる。夫婦はコートジボワールの国家イメージも体現しているのである。
夫婦がお互いにアドバイスを出し合う関係。
昨年11月にカイロでおこなわれた東京五輪予選がまさにそうだった。トゥーレが当時を振り返る。
「たまたま私も仕事でカイロに滞在した。しかも驚いたことに、五輪出場が決まる準決勝のときだった。私はそれまでの試合を見直してすべてを分析した。そのうえでチーム構成や戦術オプションについてじっくり夫と話し合った。
逆に彼が私にアドバイスをくれたときもあった。
五輪予選3回戦のナイジェリア戦がそうで、私は当初ボランチをふたり配した4-3-3で試合をスタートするつもりだった。でも彼が提案したのはひとりのアンカーの前に10番をふたり置くシステムで、他のスタッフとも話し合った結果、彼のやり方で試合に臨んだ。凄くうまくいったわ。ハイダラは私たちの外部スタッフのような存在で、同じ情熱を分かち合うことで私たちの絆は深まっていく」
ハイダラもまた同じ思いを抱いている。彼は言う。
「同じことを心配し、悲しみを共有するのも悪くない。違うかい? 彼女の合宿中もよく話し合うし、私の合宿でもそうだ。話せば決断がしやすくなるし、ひとりではとても考えつかなかった新しいアイディアも得られる」
監督業のストレスを家庭に持ち込まない。
正式な代表スタッフとして、同じチームで働きたい――というわけではないという。
「その点は誤解されたし意図も正しく伝わらなかったこともあるかもしれない。私たちはそんなことを望んでいるわけではない。ただしクラブならば、一緒に働くのも可能だと思うことはあるけどね」とハイダラは言う。
ふたりが今、最も気にかけているのは、監督という仕事のストレスを家庭に持ち込まないこと、その悪影響を子供たちに与えないことである。
「家では子供の教育が最優先で、妻も同じ思いだ」とハイダラは語る。
東京五輪に関しては、MFのハメド・ジュニオール・トラオレ(20歳、サッスオーロ)やGKのエルエゼル・タペ(22歳、FCサンペドロ)ら有望選手を擁する男子が東京行きを決めているのに対し、女子はアフリカ予選4回戦でカメルーンに敗れ(0対0、1対2)、夫婦揃っての本大会出場はならなかった。
「ただ、日本には視察で行くかもしれない。本音を言えば、男女ともに出場したかった」とトゥーレは心情を語る。
もちろんそうだろう。ふたりが一緒に歩む人生は、これからもずっと続いていくのだから――。